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□あらしのよるに
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「風、すごい、ね」

「ああ」

「雨、やまない、ね」

「ああ」
―ああ、愛してやまない

何が嬉しいのか、ベットの中
幸せそうに三橋が笑う


外では季節外れの台風が俺達のしていることを咎めるように激しい風雨を靡かせている


俺達は雨が降るとその雨に隠れて恋人になれた

背徳的な俺達の愛は知られてはいけなかった


だから雨で部活が短くなった日や
警報が出て休みになった日には誰もいない三橋の家に上がり込んでは
日頃の溜まったものを吐き出すように全力で愛し合った


「ふふっ」

「なんだ?」

「なんでも、ない」

「なんだよそれ」

別に男が好きだった訳じゃない
いつから好きだったかなんて忘れた
気づけば好きだった

変な性格もプライドも全部引っくるめて


ふわふわの髪も白くて柔らかい肌も今オレを見つめている色素の薄い大きな目も

何もかもが愛おしい


頭のてっぺんから爪先まで全部オレのものだ


「ねえ、好き?」

「ああ」
誰にも渡したくない

「ふひっ」

「なんだよ、今日はやけに積極的だな」

いっつもすることしておいて顔を真っ赤にするくせに



どうしてこんなにオレを夢中にさせるんだ―







――雨の日はいつもかつての恋人を思い出される

特にこんな酷い嵐の夜は


白くてふわふわしたオレだけの恋人


びしょ濡れになって上がり込んだ三橋は
渇いた心を潤してくれた

暖め合うように冷えた肌を寄せ合っては
甘い愛の言葉を囁いた


誰にも知られなかった恋は
誰にも知られずに終わりを迎えた





 

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