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□そして君はいなくなる
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「おまえ…何やってんだよ!」

―なに、が?

「何がって、今部屋から出ていった男はなんなんだよ!」

―何って友だち、じゃ、ないか

「友だちって、そのオトモダチと何してたんだよ」

―見ての通、り

「…おまえ最低だな」

(最低だって言いながら
汚らわしいとか思いながら
それでもオレを抱くんでしょ?)

ほんとにどこまでも自分の本能に正直で
自分の気持ちに嘘をつく


知ってるんだよ?
阿部くんに結婚している奥さんがいること、
その奥さんを大事に思っていること

オレのことはなんでも二の次で
奥さんにバレないように自分の趣味と快感を得るためだけにオレがいる


(―それでも言わないけどね。)


言ってしまえばきっと阿部くんはオレの元を去っていく

所詮阿部くんにとってオレは都合がいい人間なのだ


―…ゴメンナサイ


「もう俺以外のやつは見るな!
俺を裏切るのはやめてくれ…
もうこれ以上嘘をつかないでくれ…!」

縋り付いて苦しげな声でそういっていつもオレを苦しめるんだ

(―どうせ去って行くのはキミなのに)


こんな事があった後でもオレ達の関係は崩れなかった

別に本当のことを聞きたいわけじゃない

オレだけを愛してなんて思わない


だから


この一瞬の時間だけでも…




オレだけを見て―


 

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