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□遠くて近い未来の約束
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双子+緑

つまりは一緒に居るということ

リハビリ文

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じゃぁ、もし、これから先の日々を早送りしたら、そこに君は居てくれる?




遠くて近い未来の約束






「この人は、お二人のお母さんですか?」


大した厚さもない古ぼけた革のアルバム。それを捲りながら瑠璃色の瞳が此方に問いかける。

覗きこんだその先、指差す1枚の写真には今よりももっと幼く、そして良く似かよった自分と片割れの姿。そんな二人の後ろで優しく微笑む女性は――――


「あぁ、それは乳母だ」


「う、乳母ですか!?こんなに綺麗な方だから、てっきりお二人のお母さんかと思っちゃいました。さすが、お金持ちは違いますねぇ」


プーチンは間延びした声を上げ一人頷き、またページを捲る。



遊びに来た途端、突然アルバムが見たいだなんて言い出したコイツのために、書斎の片隅で埃を被っていたそれを引っ張り出してきたのだ。


そして、プーチンは先程から何かを検分するようにそれを眺めている。


「これは?」


「大叔父とその子供だな」


プーチンはへぇ〜、なんて言いながらまたパラパラ捲っていく。別に感想を求めている訳ではないが、何も言われないのも微妙な気分だ。しかもあれだけ見たいと騒いだ後なだけに…


「…おい、もういいだろう」


こんな風に食い入るようにアルバムを見られるとさすがに照れが生じる。手にしたアルバムをひょいと奪い取ると、あぁ!ダメですよぉ!!なんて間抜けな声を上げる。いったい何がダメだというのだろうか。

仕方なく取り上げたアルバムを戻してやる。しかし、



「見ているのは構わんが、何かないのか?」


「あ、そうですね。小さい頃のキルネンコさんも、キレネンコさんも、とっても可愛いです」


「おい…」



そうではなく、と言い返そうとしたその時、困ったような笑みを浮かべてプーチンはポツリと呟く。


「それに、僕の知らないお二人を知ってる人たちに少し嫉妬したりして」


だって、ここに僕は居ないでしょ?とおどけたように言われ、二人は困惑してしまう。それを言うならお前の過去にも俺たちは居ないじゃないか。どんなに強く望んでもそれは叶わない。



「不思議ですよね、時間って」


そう問われ、軽く頷く。
確かに。ここに写っとる俺達はお前を知らない。けれどそれは当たり前のことだ。生まれた所も育った場所も違う。生きてきた時間が違うのだ。


それを考えてみれば、過去を写したままの写真は凄い。いや、カメラというものを考えた人間が凄いのか?どちらにしても、コレを考えた人間はどうしてカメラなどという存在を望んだのだろう。

その一瞬を刹那的に切り取り未来へと繋げる不可思議な紙片。
そこには確かに自分達が存在した時間が流れていて、とそんなことをつらつらと考えていると隣からあ、と楽しげな声が上がった。


「じゃぁ、もし今写真を撮ったら未来の僕たちが見てるって事ですよね!」


「…何を言い出すかと思えば」


「だって過去には無理だけど、もしこれから先の日々を早送りしたら、その場面にキレネンコさんとキルネンコさんは居てくれますか?」


今日からずっと写真を撮り蓄めていくとして、その写真にあなたは居て、それを見返す時にもあなたは僕の隣に居てくれる?


「…本当にお前は」


「え、なんですか?」


「未来とか過去とか、俺達ではどうにも出来ない」


えぇと、つまりそれは、一緒に居るかなんてわからないということだろうか?


僕の目がそう言っていたのだろう。二人は困った様に肩を竦め、違うだろ、と言った。何が違うのだろうか。


「未来とは今の連続だ。つまり…「つまり、今一緒に居れば、自然に未来も一緒に居る事になる」


「…えーと、よくわからないんですけど?」


「アルバムを見始めた時間からすれば今は未来だ。つまり、ずっと一緒に居る。だから、これから先もこの延長だと言うことだ」


つまり、つまり一緒に居る、と言う事なのかな?あぁ、何故この人達はもっと分かりやすく言えないんだろう。でも、今はそんなことはどうでもいい。

だって一緒に居ると言ってくれたから。










「…じゃぁ、その近くて遠い未来の約束のために一緒に写真とりませんか?」


そう言って僕は隠し持ってきていたカメラを手に取った。希わくば、近い、遠い未来の僕らがこの写真を一緒にみていますように。






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リハビリ!リハビリ!
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2012.03.31



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