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□キミニ逢イニ行ク
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この気持ちはなんだ?
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君は元気にしているだろうか?
泣いてなどいないだろうか?
今も…笑っているだろうか?
キミニ逢イニ行ク
短いけれど、暑い、暑い夏がやってきた。四角く切り取られた窓の外では、五月蝿いくらいに蝉が鳴き、ギラギラと照り付ける太陽が肌を焼き付ける。青々と茂った木々は真っ黒な影をつくり、少しばかりの涼を求めてカンシュコフはその日陰となっている窓際に腰を下ろした。
何もしなくても流れ落ちる汗。照り付ける太陽に辟易しながら、額に張り付く髪を無造作に掻き上げ、そのまま首を傾げて空を見上げた。雲一つない酷く蒼い空。暑さで朦朧とする思考は、否応なしにあの日を思い出させる。やっぱり夏なんて嫌いだ、そう呟いてカンシュコフは目を綴じた。
一年前のあの日、アイツは何をしていただろうか?あぁ、楽しげに部屋の片付けをしていたな。ベッドの下から古ぼけた鞄を取り出し、本人曰く宝物だというガラクタを目一杯詰め込こんで。
外にでることをとても楽しみにしていたんだ。だから信じられなかった。
穴の開いた壁、誰もいない部屋。それを見た時の俺の気持ちがお前にわかるか?
失って初めて気がつく感情。
好き…だったのだと思う。一緒にいる時は努めて気にはしていなかったけれど、お前が何かを話すたび、笑うたびに怒るたびに俺の胸は得も知れぬ感情の波に侵食され蝕まれていったんだ。
愛とも恋とも呼べない稚拙な感情。けれど親愛でも友愛でもない。でも、この胸にある確かなモノ。
そんな感情を持っている俺をお前はどう思うのだろうか?日々募っていくこの思いを俺はどうしたらいいのだろうか?
カンシュコフは制服の内側にしまい込んだ一枚の写真を取り出す。そこに写るは笑顔のアイツ。
キミニ逢イニ行ク
次の休みに会いに行こう。
甘いお菓子をたくさん買って、綺麗な土産をたくさん持って、この『好き』という気持ちも連れて。今もきっと笑ってるキミに会いに行こう。
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報われないカンシュくんの恋の行方は!?次回カンシュが動きます。彼らが登場しますよー(ぇ)
2011/07/28
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