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□潮騒
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看+緑

海に思いを馳せる

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 「ほら、土産だ」

 そう言って渡したのは何の変哲もないただの紙袋。

 「ほぇっ?」


 突然、掌にぽんと落とされた紙袋にプーチンは、間の抜けた声をだし紙袋と監視用の小窓から目だけを覗かせるカンシュコフを見遣った。


 「いいから開けてみろ」

 カンシュコフの声に急かされ、広げた紙袋の中。見たこともない、色とりどりの貝殻が顔を覗かせた。


 「ふわぁ〜綺麗な貝殻ですね。どうしたんですかコレ?」


 プーチンは瑠璃色の瞳をキラキラと輝かせ、一つ貝殻を摘みあげほの暗い室内、唯一の明かり取り用の窓から差し込む日の光に翳してみせた。光の反射で虹色に輝く貝殻。ほんのり薫る潮の匂い。


 「カンシュコフさん、海に行ってきたんですか?良いなぁ〜」


 「良くねぇよ。護送の仕事で行ってきたんだぜ?」


 しかも自由時間なんてものは存在するはずもなく、長距離運転(実際運転していたのはカンシュコフだが)で機嫌の悪い同僚の目を盗んで、コッソリ抜け出し拾ってきたのだ。
海を見たことのないプーチンのために。


 「僕も海見てみたいな。ねぇ、カンシュコフさん、海ってどんな感じなんですか?やっぱり青くて広いんですか?」


 無邪気に笑うその笑顔が眩しい。あぁ、海に反射して煌めく太陽みたいだ。目を細めてプーチンを見遣れば好奇心旺盛な瞳がこちらを見つめている。ワクワクとかドキドキとかそんな効果音が聴こえてきそうだ。


 「そんな期待するようなもんじゃねぇよ。ただのデッカイ水溜まりだよ。み ず た ま り」


 一言一句区切りながらそう言えば『えぇーー!』という非難の声が返ってくる。もう笑うしかない。どんだけ期待してんだよお前は。



 「いいなぁー、僕も海に行ってみたいなぁ」


 そう言いながらプーチンは瞳を綴じて海に思いを馳せる。





潮騒








 空を映し出したような真っ青な色。たゆたう光。寄せては返し、足元を擽る波。


 貝殻をそっと耳にあててみればほら、潮騒が聴こえる。





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 日記小話を再録。海の日記念。管理人は海が好きです。




2011/07/20 再録2011/08/01








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