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□生まれたところを遠く離れて
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赤+緑

脱獄記念。

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 夏の終わり。オレンジ色に染まった空はどこか懐かしく、記憶の奥深くに眠る何かを呼び覚ます。

 友達と喧嘩をしたあの日。叱られてこっそり泣いた河原の土手。誰かと手を繋いで歩いた畦道。楽しかったことも悲しかったことも、全てが夕日に起因する。思い出は何時だって夕日と共にあるのだ。

 今、自分が見ている夕日も何時かはきっと楽しかった思い出として記憶に刻まれる。そしてその記憶が、自分だけではなく隣に座るキレネンコにも残ればいいとプーチンは思う。


 だって何時までも一緒には居られないと解っているから。


 優しく世界を包み込み始めたオレンジ色は、稜線を淡く染め、濃紺に輝く夜を連れて来た。迫りくる闇が思考を飲み込む。脳裏に浮かんでは消える最悪の結末。それを振り払うかのように緩く首を振り、プーチンは努めて明るい声を出した。


 「ずいぶん遠くまできちゃいましたねぇ」


 ガタガタと有り得ない音を鳴らし、それでも何とかといった風情で走るモスクビッチ。そんなモスクビッチのステアリングを握りながらプーチンは隣に座るキレネンコに話かけた。けれど、答えなど返ってくるはずもなく、それは虚しい独り言になる。

 チラリとミラー越しにキレネンコを見遣れば、ひたすら手にした雑誌の1ページを熱心に眺めている。どうりで返事がないはずだ。開かれたページには、赤い布地にたくさんの星が散りばめられたスニーカーの写真。そのスニーカーをまであと少しだ。この山を越えれば街にでる。

 まるで小さな子供のような顔をするキレネンコにプーチンは苦笑いを零し、サンルーフから覗く空を見上げた。そこには浮かび上がる満天の星。


 「あ、流れ星!」


 キラリ、流線型を描きながら星のカケラが落下する。


 「また流れ星!ほら、キレネンコさん流れ星ですよ。何かお願い事しなくっちゃ!えっと…えーと……」


 キレネンコのシャツの裾をちょいちょいと引っ張ったかと思うと、プーチンは車を停車させ、目をつぶり懸命に願い事を考え始めた。時折、唸り声のようなものを上げる。そんなプーチンをチラリと盗み見て、キレネンコは呆れた様な何かを諦めたかの様な顔で僅かに溜め息をついた。












 懐かしむような郷愁も故郷さえもなくしたけれど、帰り着く場所は何時だってキミの傍でありますように――――





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 先に言っておこう。断じて浜省ではありません!同タイトルの曲の歌があるんだよね笑

せっかくの脱獄記念(フライングだが)なんでこんな感じで。プーもキレも個人的に故郷というものがないように思うんだ。脱獄前も脱獄後もきっと根無し草の様な暮らしじゃないかな。

そんな二人だからこそ、互いの傍が故郷と呼べる場所だといい。




2011/08/22



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