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□ひだまりの薫り
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赤+緑
監獄での出来事
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『ひだまりの薫り』
薄暗い監獄には不釣り合いな香りが、ふ、と香ったような気がした。
甘い砂糖菓子のよう花の蜜のような、懐かしいその香り
はて、そんなものこの監獄内にあっただろうか?とキレネンコは不思議に思い、読んでいた雑誌からほんの少し目を離した。
離した視線の先には、薄汚れた壁と目にも鮮やかなきのこ。そして蛙やヒヨコと戯れるアイツの姿があった。
何がおかしいのか、ニコニコと柔らかい笑みを称えている。
その視線に気がついたのか深い、深い、透き通った海の底の様な瑠璃色の瞳が不思議そうにこちらをみやった。
視線が合った途端、ふにゃりと緩められるその瞳と顔
また、甘いような懐かしいような香りが鼻孔を掠める。
『まさかな…』
そう思いつつも自分の考えを確かめたくて、キレネンコはプーチンの下へ歩み寄った。
邪魔な二匹の生き物を無言で投げ捨て、無造作に放り出されていた足に頭を乗せる。
「む、むほぉ!?」
アイツが奇妙な声を上げワタワタと身じろぐが気にしない。更に頭を深く沈め、持っていたスニーカー雑誌を広げた。
寝心地は悪くない。
戸惑うアイツを余所に、ぺらぺらと頁をめくっていると、雑誌の向こう側
困った様に眉尻を下げ、アイツが小さく笑った様な気がした。
そして香る甘い匂い…
甘い、甘い、砂糖菓子のような、とろり蕩ける花の蜜のような懐かしい香りと、太陽みたいにキラキラ眩しい微笑み。
『どうしたんですか、キレネンコさん?』
「……なんでもない」
『ひだまりの薫り』
(あぁ、ここは息がしやすい)
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ひだまりの匂いってよくわからんがプチは良い匂いだよきっと← だから監獄って息が詰まりそうなところでもキレは息苦しさを感じないんだと思う。
2010/12/13
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