長編
□第4話『ずっと隣に』
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ずっと聞きたいと思っていた事だった。
確かに、今の三成の飼い主は、そこいらの身勝手な人間とは違うかもしれない。
それでも、人間に酷い目に遭わされたというのは紛れもない事実だ。
何かしら脅えや怒りなどを表してもいい筈だというのに、三成は恨む素振りどころか愚痴も言わず、籠の中の世界に居る事が清正には理解できなかった。
「まぁ…確かに、俺が飛べなくなったのは人のせいかもしれん。だが、今の飼い主はこんな手の掛かる俺を拾って大切にしてくれている」
「それは俺にも分かる」
自分達を寛容してくれている様子を見れば、そんな事は分かり切っている。
だが、どこまでいってもあの女性も三成を傷付け、鳥としての尊厳を奪った同じ人間だ。
それを……
そんな身勝手な奴らを
許せるのか?
自分に向けられる視線が少し険しい事に、三成は清正の意図を悟って苦笑する。
大方、この飛べない翼の事を言っているのだろう。
鳥として気にもしない自分がおかしいのかもしれないが、他所の事だというのに、やけに清正は気にしている。
「お前の言わんとしている事は大体分かる。それでも俺は今がいい」
「…だが……」
「それに――」
言い募る清正の言葉を遮って、三成は一瞬目を伏せた。
それからゆっくりと瞬きをして再び顔を上げる。
「こうして、お前にも会えた」
ふわりと三成が笑う。
その曇りも迷いも無い無垢な表情に、清正は目を瞠った。