長編

□第6話『最後の約束』
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その笑顔はいつも見てる笑顔とは違い、余りにも儚く悲しい色を映している。

「お前と居て…今まで本当に楽しかった。だから…――ッ!」

三成が大きく咳き込んだ。
同時に散った紅が白い羽に飛び散り、染みを広げて行く。
その様子を目にした清正は、眼下の三成を睨めつけた。

「――『だから、死ぬ姿は見せたくない』ってのか?」

「………」

三成は答えない。

その身体が小刻みに上下している所を見ると、呼吸が非常に荒い事が見て取れたからそのせいかもしれない。


「ふざけんな」



――人の気も知らないで。
――何もかも置き去りになんてさせるか。


清正は籠の格子を持ち上げると、そこから中へと入って行った。
少し狭い入り口を通りぬけ切ると、がしゃんと乱暴な鳴って入り口が閉じる。

「な、にを……!?」

首を持ち上げ、驚いた表情の三成を黙殺してその隣にしゃがんだ。
横たわったままだったその身体を起こしてやると、自分の方に寄り掛からせて支えた。

「清ま…」

「今までずっとこうしてきたんだ。最後まで…そうしたって構わないだろ」

清正の言葉に三成は一瞬目を瞠り、くしゃりと今にも泣きそうな表情になる。

「馬鹿が…ッ」

「今更だろ」

そう言って、清正は労わる様に三成の頭に頬を擦り寄せた。

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