特殊系置場

□世界で一番可愛い奴!
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2/23(にゃんにゃんみゃー)


甘く芳しいミルクティのような毛色と、ぴんと立ち上がったふたつの耳。

気持ちに併せて揺れる尻尾と、くるくる色を変える琥珀色の双眸。

そんなミルクティの先にある前足はどちらも真っ白なミルク色の靴下を履いていて更に愛らしい。

だが、その愛らしさの中には隠れているのは――


「痛ってぇ!」

不意に受けた攻撃に頭を撫でていた手を思わず引っ込めると、手の甲には細く紅い蚯蚓腫れが刻まれていた。
何すんだと恨めしく元凶を見遣れば、眼下の愛猫はつんと顔を背ける。
ふわりと揺れる紅鳶色の髪の合間から見えるふたつの耳はぴんと三角形に立ち上がり、尻尾を忙しなく床に打ち付けて不機嫌さを顕にしている。

「ったく…またそうやって突然不機嫌になるのな。お前は」

引っ掻かれた手を撫でながら溜め息を吐くと、薬を取りに立ち上がる。
こうやって引っ掻かれるのは日常茶飯事の為に消毒用の薬はすぐ取り出せる位置に置いていた。

「この前の傷もまだ消えてないな」

ぶつぶついいながら傷口に泡状の消毒薬を吹き掛けると独特の痛みが走り、思わず眉を潜めた。
ちらりとソファーを見遣れば三成は先程と同じ位置に座っていたが、その様子が先程と違う事に気付いて思わず口許が緩む。

手当てを終えてソファーに戻ると、相変わらず三成は足元に座りながらも清正を見ようとはしない。
だが、ぴんと綺麗な三角形を描いていた耳は先程までの勢いは何処へやらな程にへにょりと伏せられ、激しく打ち付けていた筈の尻尾は力無く床を這うだけだった。

「三成」

余りの変わり振りに苦笑しつつその名を呼べば、一瞬だけぴくりと耳が動いたが、顔は相変わらず清正の方へと向けられない。

他人が見れば全く変化の無いように見えるだろうが、ずっと三成と暮らしてきた清正には可愛い愛猫の小さな変化がはっきりと見えていた。

変わらず垂れたままの耳だが、先程と違い後ろに寝ているのは清正の声と変化を聞き逃さない為。
床に力無く投げ出されていた尻尾の先がちょこちょこ動いているのは、清正が構ってくれるのを待っているのだ。

ああ、もう本当に何処までも愛らしい。

飼い主冥利に尽きるとはこのことだろうかと思いながら、背を向けたままの三成の頭をそっと撫でる。

触り心地の良い髪が指の間を通る感触は、何度引っ掻かれようが癖になっているので止められない。
三成も先程の引っ掻きを悪いと思っているのか、されるがままになっていた。

撫でていた頭から耳の付け根をふにふにと揉んでやると、心地良さげに喉を鳴らして甘えてくる。
そのまま頭を撫でていた手を滑らせて喉を擽れば、膝に擦り寄って目を細める姿は飼い主の欲目を抜いても本当に愛らしい。

友人宅以外でもネット上や道端で幾多の猫に出会ってきたけれど、やはり三成に敵う猫には出会ったこともないし、これからもないだろう。

「やっぱりお前が世界で一番可愛いよな」

そんな飼い主馬鹿丸だしな清正の呟きに、眼下の三成は満足げに笑んで『にゃあ』と鳴いた。


“お前も最高の飼い主だ――なんて、死んでも言ってやらないのだよ!”





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