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立秋も過ぎ、太陽が顔を出す時間も日に日に短くなってくるこの時期。冷たくなる秋風に足早に家に帰る人々の姿はあれど、外で会話をする姿は見かけなくなった。

代わりに、家の中では帰宅した家族がわきあいあいと今日の出来事などを話ては笑い合う声が窓から溢れている時間帯。そんな閑静な住宅街の一角にある豊臣家からは、周囲の家々とは全く違った声が聞こえてくる。

「この馬鹿が!こんな簡単な問題も解けぬのか!」

「うるせぇな!解るならお前なんかに聞くか!馬鹿!!」

とても和気あいあいとは言い難い喧嘩腰の遣り取りの主は、豊臣家の長兄三成と末弟清正である。
この騒ぎに運悪く外を歩いていたサラリーマンはぎょっとし、塀を歩いていた野良猫は飛び退いて逃げていった。

こんな二人の様子に始めは家族も心配していたが、最近ではすっかり慣れてしまったらしく何も言わない。
まぁ、余りにもひどい時には義母のねねから説教という名の制裁を喰らうのだが。

そもそも、三成が義弟である清正の家庭教師をする事になったかといえば、切っ掛けはねねの頼みであったが、その陰には清正たっての希望もあった。

養父である秀吉傘下の会社に就職した次兄の正則はともかくとして、清正は三成に続いて来年は大学受験を控える身である。

希望の大学を受験するまでにしっかりと成績を修めておかなくては後々が苦労するだろう。

かといって塾に通うにも家族に金銭面で負担をかけてしまうし、バイトをすれば勉強がおろそかになって意味がない。

ならば、小中高と成績は常にトップレベルで今でも難関大学と言われる大学に通い、トップを維持している三成に白羽の矢が立った。
その旨をねねに話せば、彼女は頷いて、『まかせておいて!』と三成の説得を快諾してくれたのだ。

そして、清正にはもう1つ、勉強以外の目的があった。

実は清正と三成は高校時代から付き合い始めた恋人関係にある。
だが、高校と大学ではスケジュールが違うし、休日も部活だったりサークルだったりで会う時間は更に少なくなる。

勉強を理由にするのは不謹慎だとは思うが、恋人が家庭教師ならやる気も出るし、何より二人っきりで居られるのは素直に嬉しい。

しかも、恋人は大学でも優秀すぎる程の成績を収めている秀才だ。
例え喧嘩になろうが三成は頼まれたことは最後まで投げださないし、何のかん言いつつも面倒をみてくれる。

そんなドタバタな家庭教師生活だったが、完璧主義者な三成の懇切丁寧な解説と、清正元来の飲み込みの早さもあって成績は目に見えるように良くなっていった。



to be continue....

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