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□冬珊瑚
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『冬珊瑚』に収録の【悋月譚】のsampleになります。

サンプルにはR指定のページは記載されておりません

※【悋月譚】本編には指定のシーンが含まれておりますので、閲覧の際はご注意ください※




 悋月譚 sample



まだ月が頂に昇る真夜中。
ふと肌寒さを感じて三成は目を醒ました。
辺りは当然の事ながらまだ暗く、障子の隙間から差し込む僅かな月明かりが周囲をぼんやりと染める。
まだ目覚めるには早すぎる時間。
むしろ眠りに就いてからそんなに時間が経っていないのかもしれない。

もう一度眠ろうかと思ったが、それには少し目が醒め過ぎてしまった。

このまま布団の中で朝を待つのも悪くは無いが、夜明けまでは大分ある。それまで眠らずには待つのも聊か退屈だと三成は起き上がり、静かに床を抜けだした。
室内に居るとはいえ、この時期ともなると直に触れる夜の空気はぴんと張り詰めており、肌を刺すような冷たさに思わず肩を震わせる。
漸く夜に慣れた目と僅かな月明かりを頼りに無造作に散らばった衣服から何とか自分の着物を見つけて羽織っていると、不意に後ろでもぞりと動く気配がした。

「―――っ」

思わず振り返ると、先程まで三成が横になっていた隣では清正が眠っていた。
敏い彼を起してしまったかと危ぶんだが、どうやらそうではなかったらしい。

「まったく…脅かすな」

安らかな寝顔にひとつ安堵の息を吐くと、吐き出された息が一瞬だけ雲を描いて闇に溶ける。
普段は互いに意固地になってなかなか本音を明かせないでいるが、眠っている清正は普段よりも何処か幼く見え、思わず三成の口許が綻んだ。


to be continue....




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