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□双宿双飛
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【双宿双飛】のsampleになります。

※人体欠損の表現がありますのでご注意ください※





双宿双飛 〜Sample〜



降りしきる雨の中、主の撤退の声に伴い、戦場から急いで引き上げる。
だが、戦が始まる前までは隣にあった姿がそこにはなかった。

毛利元就に撃破されたのはお互い様だが、あの存在が忠臣無く上手く逃げ仰せたとは思えない。
遠くに居た馬を呼び、急いで踵を返して彼が戦っていただろう場所に向かう。

陣屋に着いて目当ての姿はすぐに見付けた。
陣の壁に寄り掛かった姿は痛々しいが、それ以上に足元に広がる赤い溜まりに目を見張る。
足元に転がるのは毛利の兵だろう。
だが、その血溜まりは遺骸からのものだけではない。

「三成!」

「…清、正か」

ゆるりと向けられた顔は常の色白とは違い、蒼白と言ってもいいほどだった。
力無い笑みを浮かべた後、三成の体は崩れるようにして倒れ込む。

「っ!おい!」

辛うじて地に着く前に抱き止めた体の違和感に、背筋に冷たいものが走った。
赤く染まったそこはぬるりと滑り、独特の臭いが鼻に付く。

「俺とした事が…しくじってしまったようだ」

「何!…」

三成の視線の先に目を向ければ、見覚えのある袖と、既に主を無くした彼の一部が転がっていた。

「負けた上に…こんな、姿になろう、とは…」

自嘲気味に笑った三成は目蓋を閉じ、そのまま意識を無くしてしまった。

「おい…しっかりしろ!三成!」

意識を失った三成の腕の出血は酷く、こうしている間にも地面に溢れて雨とともに吸い込まれている。
徐々に失われる色に清正の脳裏に過るのは最悪の結末だった。

だが、そんな事をやすやすと受け入れることなどできるわけがない。
三成の傷口を細く裂いた布できつく縛り、その上もきつく布で縛った。
傷口には当て布をしてから、更に布を巻いて止血を施すと、激しかった流血が治まった。それと同時に三成の顔色もほんの僅かだが落ち着いたように見える。

だが安堵する間もなく、遠くに聞こえる無数の兵の声は残党狩りだろうか。
これ以上此処に留まるのは危険だと判断し、清正は三成を背負い、急いで戦場を離れた。



to be continue....








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