長編

□第3話『隔たりを越えた先』
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それから数日後のある日――
清正が三成の元へとやってくると、いつもならば出ているはずの三成の居る籠が出ていなかった。
今日は天気も良いし、特に外には不都合な要素は見当たらなかった。

「どうしたんだ…?」

具合でも悪いのだろうか?だとすれば尚更気になってくる。
取り敢えず、様子だけでも確認出来るかもしれないと清正は籠が置かれる台の上に下り、そこから見える窓の中を覗いた。

見えた先の窓辺には籠が置かれていて、勿論三成もその中に居た。
特に具合が悪そうでもない事にほっとするが、三成は何処か落ち付かなさそうに止り木をうろうろとしている。
台から少し飛び上がって窓を嘴で叩くと、それに気付いた三成がこちらを見上げた。
その表情は困惑しており、何かを言おうと頻りに鳴いているのは分かるが、窓に遮られていて聞き取る事は出来ない。

声だけでも聞ければ良いのだが、と清正は思うが、目の前に立ちはだかる窓硝子相手ではどうしようもない。
中を窺っていると、何度か籠の前を人が通り過ぎる様子が見え、その度に三成は羽をばたつかかせて必死に何かを訴えている。

清正は台の上から三成の様子を見ているしか出来ず、結局その日は話す事も儘ならないままに一日が過ぎてしまった。

翌日もまた、その次の日も、三成の籠は家の中に入れられたままで、同じ様な状態のままに一日が終わってを繰り返していた――

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