長編

□第6話『最後の約束』
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それから数日後、いつもの様に清正が三成の元へ飛んでくると、籠が出ているのに三成の姿が見えなかった。
花が消えた庭の中で、あの白い姿を見落とすはずはないのだが…
しかも籠だけが出ているのはおかしい。

近付いて台の上に止まり、清正は籠に近付いて中を覗いた。
すると、籠の中では三成が力なく倒れ伏している姿が在った。

「三成…!?」
「清…正か?」

掛けられた声に、ゆっくりと瞼を持ち上げた三成が首だけを起こして清正の方を向いて力なく微笑む。
何とか起き上がろうとしているようだが、力が入らないらしく身体を起こすまでには至らない。

「飼い主はどうした!?」
「今朝、出掛けて…居ない」
「くそっ!」

間の悪さに清正は舌打った。
何とかしてやりたくても、自分だけでは何も出来ない。

「一体何が…」
「そろそろか、とは…思って、いたんだが……」
「何だよそれ…」

三成がふっと溜め息を吐く。


「俺は…長くは生きられない身体、なんだ…」

「―――ッ!!」


生まれ付き、内臓に先天性の障害を抱えていたと知ったのは此処に来てからの事だったと三成は言う。

長くは生きられないと告げられはしたが、皮肉にも飛べなくなった事が三成の命を長らえていた。
初めてみた時に美しいとは思ったが、その中に言いようのない儚さの様なものを感じたのはこれだったのかと清正は思う。


「…もう、行け」
「何…?」
「これで…終りだろう…だったら、このまま行け」
「三成!」


納得できないという清正に三成は笑って見せた。


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