長編
□無音の世界にただひとつ遺された約束
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眠るように息を引き取った愛しい存在。
隣に残された温もりはやけに暖かくて、そして痛かった。
だが、過ぎていく時間はそれすらも無情に奪って行く。
僅かに身じろいだだけで、寄り掛かったままの身体は力なくその場に倒れた。
閉じられた眼は二度と開かない。
擦り寄せた嘴は二度と名を呼んではくれない。
さっきまであんなに暖かかったのに、今では物と変わらぬ程に冷えてしまった躯。
「三成」
答える筈はないと分かっていても、番の名を呼ばずにはいられなかった。
眠っているような三成の表情はひどく穏やかで。
それが――余計に悲しくて。
不意にひらりと、と白い欠片が籠の外から舞い落ちた。
見上げれば、それは薄灰色に染まった空からいくつも降りて来て、地に着くと共に姿を消した。