ひぐらしのなく頃に 長編アンソロジー
□第5章 苦渋と葛藤
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「上手くいかないときっていつもそう。今回は大丈夫かもしれないと思っても束の間、絶望の底に叩きつけられてオシマイよ。とても些細な綻びから、なにもかもが悪い方向に流れてしまうの! だから今だって、」
止まらなかった。
不安だったのだ。
信じたい。
いや、信じている。
だからこそ、不安や迷いが生まれる。
それを素直に口に出せない。
――だって私は、魔女なんだから。
「梨花――」
羽入は、反らし続ける梨花の瞳にも、簡単に入り込んでくる。
そして投げつける。
「諦めたのですか?」
「――っ、」
羽入の言葉、
たったの一言、
それが痛かった。
羽入は、自分も諦めないと言った。
『今回は大丈夫』
羽入はそう言った後、
本当は『ボクも信じています』と続けたかったに違いない。
誰よりも羽入の近くにいたのに、まだ修正がきくかもしれない小さな綻びに囚われていた。
戦う前に、絶望的な気分になっていた。
――馬鹿ね、私は。
――彼女の気持ちを、私が踏みにじるようなことをしていいの?
――彼女とともに生きていた、この私が。
梨花はふっと笑みをこぼした。
自嘲と反省を込めたつもりだ。
「諦め……? そんなわけ、ないわよ。神様がさじを投げたとしても、私は諦めない。最後の瞬間が来たとしても、足掻いてみせる。絶対、私だけは諦めないんだから。私は……精一杯の努力をする。簡単に運命には屈したりしない。だって…、でないと、最悪の奇跡をもろともしない仲間たちに失礼じゃない?」
――負けるものか!!
つい熱くなってしまい、沙都子が目覚めてしまわないか不安がよぎる。
しかし沙都子は安らかな寝顔を見せており、それは杞憂に過ぎなかったようである。
梨花の決意に答えるように、羽入がぴょんぴょん跳び跳ねる。
「あぅあぅ☆」