ひぐらしのなく頃に 長編アンソロジー
□第2章 奇跡の代償
1ページ/19ページ
前原圭一は朝から外で首を捻っていた。
そして唸っていた。
おかしいなぁ、と。
何度もその場を数歩行ったり来たりして、そしてまた呟く。
おかしいなぁ、と。
彼にとっては一大事なことだった。
雛見沢に転校してきてからまだ一週間ほどだが、こんなことは初めてだった。
「今日、本当に学校あるんだよな…?」
不安になってきた。
平日にそんなことを考えるほど、圭一は焦っていたのだ。
彼にとって、それほどの事態が起こっていたのだ。
レナが――いないのだ。
彼は今、毎朝待ち合わせしている場所にいる。
今日は寝坊することがなかったから、レナが迎えに来る時間にはならなかった。
しかし、待ち合わせ場所には絶対いる時間だった。
寝坊したりして遅れると、わざわざ家に迎えに来てくれる。
よく出来た子だな、と最初は驚いた。
本当に同級生か疑うほどだったのだ。
しかしレナと過ごすうちに、圭一も彼女が本当に優しくていい子だということに気づいた。
かぁいいもの好きで、気に入ったものはなんでも持って帰るという変わった性癖は持っているが、それを含めても…。
いや、と首を振る。
そんなところも魅力の一つなのかもしれない。
女の子らしい良い子だがそれだけじゃない。
それを十分に実感するのに、一週間も必要なかった。
だから、今の事態が信じられなかった。
いないのだ。
竜宮レナが、待ち合わせ場所にいないのだ。