ひぐらしのなく頃に 長編アンソロジー
□第4章 異変と疑心
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梨花と沙都子の家からの帰り道だ。
詩音は圭一に腕を絡め、必要以上にくっついて来る。
圭一が少し離れるように言っても、
「なんですか、圭ちゃん。私にくっつかれるのがそんなに嫌なんですか?」
と、逆に睨まれるばかりなので、それ以上言えない。
しかしどうしても、気になって仕方ないのだ。
詩音の胸の感触が。
「私はお姉と違って女の子なんですよ? 夜道だって怖いんです」
圭一はふう、とため息混じりに言う。
「スタンガン常備しながら、よく言うよな」
「えー、襲われたら怖くて役に立ちませんってばぁ」
「わかったわかった。今日はどこまででも送って行ってやるから。でも御三家の園崎家の人間を襲う奴なんて、雛見沢にはいないだろうな」
「へぇ、意外です。よく知ってますね」
言葉とは裏腹に、彼女はなんの感情も含まれていない表情をしていた。
そして小さく、「でも惜しいです」と。
「私は…、お姉じゃない。もう魅音じゃ、ない」
また暗い顔になる。
暗くてよく見えないが、きっとさっきのような顔に違いなかった。
詩音が魅音じゃないからと言って、なぜそんな表情をするのは圭一にはわからない。
しかし言わずにはいられない。
「自分は自分だろ。俺から御三家とか言い出しておいてなんだけどさ…、やっぱり詩音は詩音だろ。魅音の妹かもしれないけど、沙都子のねーねーだろ」
「圭ちゃん………」