ひぐらしのなく頃に 長編アンソロジー
□第2章 奇跡の代償
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「まさか風邪か…?!」
それしかありえない、家まで行かなくてはッ!! という結論に至ったところで、聞き慣れた声が聞こえた。
振り返ると、そこには小さく手を振るレナの姿があった。
「おはよう、圭一くん。えっと、ごめんね…、遅れちゃって」
「いや、全然いいぜ。俺も今来たばっかりだからなッ」
実際、待ち合わせ時間には間に合っているはずだ。
しかし圭一は、レナに対して違和感が拭えなかった。
さっきまで風邪かもしれないと思考を巡らせていたせいかもしれないが、レナの顔色が優れないように見えたのだ。
圭一がその旨を口にすると、レナは苦笑した。
「今日の圭一くんはちょっと鋭いよぉ…」
「そうかぁ? 俺はいつでもレナのことを考えてるからなッ」
「けけけ圭一くんッ?!」
レナは困ったように、顔を赤くする。
からかうと素直に可愛い反応を見せる。
それがわかってから、圭一は毎朝レナをからかうのが楽しみで仕方ないのだ。
これでとどめだ! と、圭一は照れているレナの頭をワシワシと撫でる。
はぅ〜!! とレナはさらに頬を赤くする。
圭一はたはは、と笑いながら、真剣な口調に戻る。
「で、どうなんだ? レナ、どこか悪いのか?」
レナは苦笑しながら、うーんと唸った。
「ちょっとね、昨日は色々考えてて…。眠れなかったの」
「大丈夫かよ?! 悩みなら聞くぜ」
「そうだよね…。聞いてもらった方が良いかもしれない。今日も寝られなくなりそうだから……」
「そんなに深刻なのか…。いつからだよ?」
「えっとね、一週間くらい前からかな?…かな?」
「えッッ?!」
普段察しが悪い圭一でも気づく。
一週間前というと、ちょうど自分が転校してきた頃だ。
――もしかして、原因は俺なのか?