ひぐらしのなく頃に 長編アンソロジー
□第3章 日常と変化
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買い物を済ませて帰路を歩く梨花は、そういえば、と思い出す。
「帰り際の圭一は、何だったのかしら」
圭一はおかしなことを言った。
いや、確かな事実を言ったのだ。
園崎姉妹で、魅音は姉ではない。
彼女は妹で、本当は詩音が姉なのだ。
――園崎姉妹の入れ替わり。
それが悲劇を生んだこともあった。
「ふふ、あの世界は散々だったわね…」
梨花は人気がない道だから、つい気が緩んで、心の声を口にしてしまっていた。
誰かが聞いているなんて――想像もせずに。
だから背後から声が聞こえた瞬間、比喩でなく息が止まった。
――ガサリ
足音が自分の真後ろまで来てやっと、彼女は他人の存在を意識した。
――ダレナノ?
梨花が振り返る前に、背後の人間は彼女に声をかけていた。
おかしな、ことを。