ひぐらしのなく頃に 長編アンソロジー
□第4章 異変と疑心
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「もぉ、なんなんですか…。圭ちゃんのくせに…」
詩音は悔しそうにボヤいた後、立ち止まった。
圭一の腕から手をスルリと離して。
そして――崩れ落ちた。
「詩音ッッ?!」
圭一が慌てて駆け寄り、彼女の肩に触れる。
彼の息が止まった。
彼女は、とても――震えていたのだ。
「だ、大丈夫かよ?」
詩音は心底困ったように、かぶりを振る。
「足に…、力が入らないんですよ。おかしいですね、あはははは」
「……詩音」
「どうしたらいいのか…、わからないんです」
「事情は知らないが、まぁ知ってても俺には立派なアドバイスなんてできねぇ。でも、詩音が後悔しない道……できれば、みんなが笑っていられる道がいいな」
「欲張りすぎです」
「そうかぁ? 正直に話しただけだぜ」
圭一は、詩音に手を伸ばす。
それを取って立ち上がった詩音は、スカートについた土を手で払いのける。
「今日は園崎家に寄ってから帰るんで、ここでいいです」
そしてクス、と笑う。
「さっきの、私が圭ちゃんとラブラブだった話とかしちゃいます」
「おっ、おい――」
少し声は小さいが、もういつもの調子だ。
「まったく。からかいがいがありますよ……お姉も…、圭ちゃんも」