ひぐらしのなく頃に 長編アンソロジー

□第5章 苦渋と葛藤
2ページ/3ページ


「上手くいかないときっていつもそう。今回は大丈夫かもしれないと思っても束の間、絶望の底に叩きつけられてオシマイよ。とても些細な綻びから、なにもかもが悪い方向に流れてしまうの! だから今だって、」



止まらなかった。


不安だったのだ。


信じたい。


いや、信じている。


だからこそ、不安や迷いが生まれる。


それを素直に口に出せない。



――だって私は、魔女なんだから。



「梨花――」



羽入は、反らし続ける梨花の瞳にも、簡単に入り込んでくる。


そして投げつける。


「諦めたのですか?」



「――っ、」



羽入の言葉、

たったの一言、

それが痛かった。


羽入は、自分も諦めないと言った。


『今回は大丈夫』


羽入はそう言った後、


本当は『ボクも信じています』と続けたかったに違いない。


誰よりも羽入の近くにいたのに、まだ修正がきくかもしれない小さな綻びに囚われていた。


戦う前に、絶望的な気分になっていた。



――馬鹿ね、私は。



――彼女の気持ちを、私が踏みにじるようなことをしていいの?



――彼女とともに生きていた、この私が。



梨花はふっと笑みをこぼした。


自嘲と反省を込めたつもりだ。



「諦め……? そんなわけ、ないわよ。神様がさじを投げたとしても、私は諦めない。最後の瞬間が来たとしても、足掻いてみせる。絶対、私だけは諦めないんだから。私は……精一杯の努力をする。簡単に運命には屈したりしない。だって…、でないと、最悪の奇跡をもろともしない仲間たちに失礼じゃない?」



――負けるものか!!



つい熱くなってしまい、沙都子が目覚めてしまわないか不安がよぎる。


しかし沙都子は安らかな寝顔を見せており、それは杞憂に過ぎなかったようである。


梨花の決意に答えるように、羽入がぴょんぴょん跳び跳ねる。





「あぅあぅ☆」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]