『principessa insanguinata』

□第7夜
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『……まだ…私が6才だった頃かな…』



思い出すのは昔住んでいた日本の風景。

昔一緒に住んでいた両親の顔に…双子の姉の顔。



『私の家は日本にあってね、両親と双子の姉の四人で暮らしてたんだ。でも…6才の時…日本はAKUMAに襲われた』



私の表情に一瞬陰が堕ちてしまったのか、アレンとリナリーが同じく暗い顔をする。

その事に気がついた私は、慌てて“今はもう過ぎたことだし、立ち直ってるから気にするなよ”なんて言って笑って見せた。

……そしてまた話を再開する。



『急に家にAKUMAが来て、私の両親は私を庇って死んだ。姉は…途中までは一緒に逃げてたんだけどね、…結局AKUMAに襲われて私を逃がすために囮になって…』



最後に聞いた姉の声。
私に向かって“逃げろ”と叫んで。

姉は私の為にあのAKUMAたちの囮になったのに…私は怖さや不安で、姉を見捨てて逃げ出してしまった。



『……それで…なんとかその場からは逃げたんだけど、結局一人になった所を私もAKUMAに襲われて…。もう駄目だ、なんて思った時に私のイノセンスが発動して、何とか生き延びたんだけど…私の場合、二つのイノセンスが同時にだったから、リバウンドがかなり酷くて。AKUMAからは生き延びたけどそれで死にそうだったんだ。でも…クロスが助けてくれた』



今でも鮮明に思い出せる、あの時の痛みと息苦しさ。

でもそのうち体がとても熱くなって…
感覚が無くなったのを覚えてる。

そして…意識が無くなりそうなその瞬間。


“生きたいか”



そう聞こえ私の目から流れる涙を拭う感覚。
霞む瞳で捉えたものは風に靡き、月明かりに輝く、綺麗なワインレッドの髪。


あの時のクロスの顔といったら。

こんな餓鬼、なんて思っててもおかしくないあの人が、寂しそうで…なのに優しくて、泣きそうな顔をしていたんだから。



『あとはそのままクロスと一緒に各地をまわって…。アレンがクロスと出会った頃かな。私が自分から教団に挨拶に行くって言って、クロスの反対を押し切りながらも教団にむかうんだけど…。イノセンスの反応を感じられるものだから…』

「ふふ、教団に行く前にあちこち寄り道して、気が付けば3年くらい経ってたんでしょ?」



少しいいずらそうにしていれば、リナリーが少し笑いをこぼしながら言葉を繋げてくれた。



『…そーゆーこと』

「あ、今話を聞いてて思ったんですけど、奏って師匠の事、名前で呼んでますよね!それにまだ幼いのに、よく生活できましたね!」



アレンの質問はごもっとも。
でもその答えはいたって簡単。



『名前のことは…あんま気にしたことなかったな…』

「そうなんですか!?あの人…僕のときは言葉使いに煩かったのに!」

『生活のほうはギャンブルだね。クロスと一緒にいて金を稼ぐ方法なんて1つしかなかったから、自然と強くなるのなんのって』



私がおそらく真っ黒だったであろう笑みを浮かべれば、リナリーは苦笑いを浮かべ、アレンはなるほど、と納得して見せた。




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