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□So Long the Distance
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暁月、元気?


……って
450年も前の時代の人に
元気?って聞くのも、ちょっとおかしいよね。
この2年間の間に、
知らずに癖になっちゃってたみたい。
今気づいたよ。



こっちはね、もう3月も終わりだっていうのに、まだまだ風が冷たいよ。
桜はまだまだ、しばらく先みたい。




あのね暁月。




私は明日、この町を出るんだ。
この町を出て…これからは「東京」ってところに住むの。

ようやく「こうこうせい」を卒業して、
4月から東京の「たんだいせい」になるんだ。


わかりやすく簡単に言うと
…少し大人になったってことかな。





だからね。
しばらくこの泉には来られないんだ。
それが、ちょっと寂しいの。





私ね。
ここに来れば少しだけ
あの時代と…
…暁月と…
繋がれてるように思えたんだ。ここが全部のはじまりの場所だから。

だから、寂しくなる度に
…ここに来てたんだ。





それにね。
昔も今もあまり景色が変わっていないからなのかな…
ここにいるとね。



「こんなところで何してるんだ?」
って…
木の陰とか岩のうしろから、暁月が
ひょっこり出てきてくれるような
そんな気がして。

あの頃みたいに。
当たり前みたいに。








今でもね。
暁月、って呼んじゃうんだ。

そんなことをしたら、
余計に寂しくなるって、ちゃんとわかってるのに。












私たち、顔を合わせる度に喧嘩ばっかりで

本当に呆れちゃうくらい、喧嘩は日常茶飯事で。
うんざりしてたけど。



だけど、そんなありふれていた日々が
今ではすっごく懐かしくて…愛しくて…

苦しくて切なくて
…たまらなくなるんだ。










時間は、越えることのできない隔たり。
遠い遠い、距離。













ねえ、暁月。
暁月は…私のこと、どう思ってたの?

あの時、暁月がはぐらかしたその答えを
聞くことは、もうできないけど…


…もし…もしも…仮に…
少しでも私のことを好きでいてくれたのならば…



どうかせめて夢の中で、私に会いに来て。









太陽みたいに明るい笑顔も、
少し鼻にかかった声も、
赤く煌めく髪も、
不思議な色をした瞳も
不器用で飾らないまっすぐさも
暁月のぜんぶが…恋しい。
















「…会いたいよ、暁月…」




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