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□不安なキス、繋がる未来
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薄く開いた唇の隙間に自分の舌をそっと入れる。
初めて感じる腔内はとても温かく、そして湿っていた。
突然入ってきた俺の舌に彼女の体は一瞬硬直したが、すぐに俺の舌を受け入れ、自らの舌で応えてくれた。

お互いが触れ合う。
温かく濡れた舌同士が絡まると今までの触れるだけの口づけではしなかった、粘着質な音が聞こえる。
柔らかく薄い彼女の舌はちろちろと、俺に優しい毒のような刺激を与えていた。
一瞬離れた唇の隙間から彼女の赤く濡れた舌先が俺の視界に入った時、


俺の中で何かが

崩れて行った。





たまらなくなった俺は彼女の柔らかい舌をやさしく吸う。
じゅっという音とともに彼女の唾液が俺の腔内にあふれ、俺はそれをごくりとのどに流し込む。
そして彼女の唇の端から一筋こぼれた唾液をぺろりと舌で舐めとる。一滴も逃したくない。

今までとは違う口づけに夢中で体に力が入らなくなった頼りない彼女の身体を見て。






もっと欲しい、と思ってしまう。




そして俺は彼女を床に押し倒していた。






歯列をなぞる。
はむっと唇をくわえそして舐める。
唇の皺ひとつひとつを舌で確かめるようになぞる。
彼女の呼吸が乱れてきた。
目尻に涙をにじませながら、苦しげに顎を上げ空気を求める姿はとても艶やかだ。
今まで見たことないその苦しげな艶かしい表情に煽られ更に唇を貪る。
くちゅくちゅという音が脳を刺激しておかしくなりそうだ。

もっと欲しい。
もっともっと欲しい。

唇だけじゃ足りなくなり、耳の下に口づけるとそこからは甘い香りがして。
誘われたかのように細い首筋に唇を沿わせると、彼女の体がびくりと動いた。
だが俺は下へ下へ行きたくて仕方ない。
沿わせた唇が鎖骨に差し掛かろうとしたその時、彼女が俺の胸を退け叩いた。

「ち、ちょっとまって秋夜!!」

驚いて唇を離すと彼女の顔は上気し、真っ赤で。
濡れた唇から漏れる息がはあはあと乱れている。
目からは幾筋も涙がこぼれていて。



それを見た俺はその時やっと我に返った。









「…す、すまないっ!!ついっ!!!」



俺は慌てて謝る。
謝るものの言葉が続かない。
なんと言っていいのかわからない。


俺を受け入れてくれた事がうれしくて、自分を見失ってしまった。
欲望を押さえきれなければ、御使い様を傷つけてしまうことなど初めからわかっていたのに。
自分の未熟さに嫌気がさして顔があげられない。
「本当にすまなかった。
なんて言えばいいのか…わからない。

俺はこういう男なんだ。
駄目だと頭では分かっていても、気持ちを止められずに、自分の欲望のまま御使い様を傷つけてしまうような、そんな男だ。
…すまなかった。
嫌ってくれても構わない。
嫌われても、仕方ない…。

本当に…すまなかった。」

取り返しのつかないことをしてしまった。
もう嫌われてしまった。
俺は終わりを覚悟し、そう告げると。


「違うの秋夜、そうじゃないの!!
秋夜が嫌とかそんなんじゃないの!」
あわてた様子で頭を大きく振りながら彼女が
俺に伝えた言葉は意外なものだった。


「ごめんね、違うの秋夜…。」
彼女は申し訳なさそうに言う。
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