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□交差する不安の、その先にある光
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暁月と一緒にこの世界で暮らすようになって一か月。
想いが通じ合ったとはいっても、やっぱり私たちは相変わらずケンカが多い。
いつも内容なんてあまりないケンカで、今まで通り仲が良い二人…ではあるのだけど。

ひとつ、心配なのは。
それはその「仲が良い」ということ。
つまり友達のような存在なのだ。
一緒に暮らしてはいるのだが、取り立てて何もしていない


手をつなぐ、ということもない。
キスは私が残ることを決めた日以来していない。

それ以上はもちろんない。



いいんだけどね。
うん、いいんだけどさ。

だけど、今までが今までだけに、このままじゃ仲のいい友達のままなんじゃないかって最近心配になってきている。
それに男の人って、好きだったらやっぱり、こう、もっといろいろしたいとか思うもの、じゃないのかな?
それは私の男子に対する勝手な思い込みなのでしょうか。






「…ってかんじなの。
ねえ瑠璃丸君、どう思う?」

「いや、どう思うって言われても…。」

刀儀さんの家でいんげんのさや取りをしている最中に思い切って相談してみる。
瑠璃丸君は終始苦笑いで。


「でもさ、好きなんでしょう?御使い様は。」

「もう御使い様じゃないってば。
…うん。好きだと思う。
好きじゃなきゃ悩まないもん。
でもさ、暁月はどうなんだろう。
仲がいい友達って思ってるのかな…。
あの時のキスは、ちょっとしたはずみっていうか、出来心っていうか、その場のノリみたいな感じだったのかもしれない。
…なんだか最近、少しうわのそらだしさ…」
私は手に持っていたいんげんを籠に入れる。
瑠璃丸君は苦笑いしながらそのいんげんをもう一度手に取る。
どうやらさやがついたままだったらしい。

「暁月はさ、器用だけど本当に変なところ不器用だから(まあ暁月に限ったことじゃないけど)分かりにくいかもしれないけど、でも、み…真奈姉さまの事は絶対友達以上に思っているのは確かだと思うよ。」

「そうかなあ。」

「そうだよ。
ね、雅刀?」

瑠璃丸くんが部屋の外の方へ声を投げ掛けると。
「お…俺に聞くな。」
と外から声がした。
まさか雅刀がいたなんて。
全然気づかなかった。
さすが軒猿。
「でもそんな事私から言えないよ…」

「大丈夫だから。
ちゃんと暁月と話してごらんよ。


だってさ真奈姉さまは何のためにこの世界に残ったの?
暁月とケンカするために残ったわけじゃないよね?
ずっと一緒に生きていきたいと思ったからでしょ?

じゃあ、怖がらないで勇気出さなくちゃ。
大丈夫だから、ね。


さあ、これでおわりっと。」
瑠璃丸君はにっこり笑い、最後のいんげんをぽいっと籠に投げ入れる。

「手伝ってくれてありがとうね。
俺はこれを綾姫様に届けてくるから。
今日は暁月帰ってくるんでしょ?
もうじき日が暮れるから真奈姉さまは家に帰らないとね。
家まで送っていくよ、雅刀が。
健闘を祈るよ。」

と言うだけ言うと瑠璃丸君はいんげんの籠を持って去って行ってしまった。
そして私は「なんで…俺が…」とぶつくさ言う雅刀に送られながら家に帰った。
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