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□君にできないこと、君にしかできないこと
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「・・・んっ!!」

私の舌の上のプリンを舌で味わう秋夜。
舌がふれあう度に、くちゅっという音がする。

そっと唇を離すと
「…本当だ、甘くて、おいしい。」
その唇をぺろりと舐める。
そんな秋夜の姿はどことなく扇情的で。



「もっと…食べたい。」

秋夜は私が手に持ってたスプーンを取りあげ、プリンをひとさじ掬うと私の口の前にスプーンを運ぶ。


「…真奈。」


秋夜の目は真剣で私はそらすことができなかった。
秋夜に促されるまま唇を薄く。
その小さな隙間から私の口にプリンをいれる秋夜。

そしてまた口づけて、挿入した舌で私の舌の上のプリンを絡め取る。



くちゅくちゅ…っと


粘着質な音が屋上に響く。
誰もいないけど、恥ずかしい。


秋夜・・・らしくない。
学校でこんなことするなんて。

少しだけ怖くなって、私は秋夜の体にぎゅっとしがみつく。


「どうしたの秋夜?
なんか…いつもと違う」

すると秋夜は目もあわせずに。
「…なんでもない」

とただ答えるだけ。

そして無言で私の口にプリンをいれ、私にキスを繰り返す。

舌の上を這う、秋夜の舌の感触。
秋夜は私の顔に両手を添えて。何度も何度も角度を変えてキスをする。
じゅっと吸われる舌。

どちらのものかわからない唾液が口の端からこぼれると。
秋夜はそれすらも舌で舐めとる。
唇に感じる秋夜の舌の感触にどうにかなってしまいそう。

「しゅう…や」

掴んだ腕に力を込めると秋夜はぎゅうっと抱き締めてくれる。
秋夜の手からころんと落ちるスプーン。


そのまま秋夜は私の体を後ろに倒していった。


覆い被さるようになった秋夜。
私の横には残り少ないプリンの容器が転がっている。



「…真奈、好きだ」

熱っぽく言うと。
秋夜は何度もまたキスをする。
私の口の中にはもうプリンはないのに、口じゅうを舌でぐちゅぐちゅとかき回される。


体の中心が疼いてくる。



秋夜のキスは私の首筋に降りて行く。
ちゅっちゅっと音を立てながら秋夜は私に口付けていく。


これ以上はもうダメ
ここは学校だし…外だし
だけど…

…体はその先を期待してる。


秋夜の手が私の胸に触れようとしたとき。







現実に引き戻す予鈴がなった。
無機質なチャイムの音に、ふと我に帰る秋夜。


「……すまない…っ」

慌てて私から身を離す秋夜。

「いい…んだけど、ちょっとびっくりしちゃった。
…秋夜、どうしたの?」

少し乱れてしまった制服を直しながら私も起き上がる。
私が聞くと秋夜は言いづらそうにぽつりぽつりと話し出す。



「…お前の隣の席で…
ふざけあったり、一緒に授業を受けたり。
授業の間の休み時間に一緒に購買に行ったり。
俺にはできない事…だから。
…なんだか羨ましい、と思った。
そう思ったらなんだかちょっと苦しくなって…」

秋夜は言いづらそうに下を向きながら言う。
その顔は耳まで赤い。

「だから…俺しかできないことをしたかった。
…すまない。」

意外な言葉に驚いてしまう。
秋夜が嫉妬してたなんて。

苦しくなって、私はぎゅっと秋夜に抱きついた。

「私だって秋夜と同じクラスの人たちがすごく羨ましい。
一緒に授業うけたり…私には出来ないこと出来るんだもん。
だから…気持ちわかるよ。

でも秋夜とじゃなきゃ出来ないことの方がいっぱいある。
他の人とは出来ないこと、秋夜とだからしたいこと。」

私は秋夜にちゅっとキスして胸に顔を埋める。

「…こんなこと、秋夜にじゃなきゃ…できないよ。

…大好きだよ、秋夜」

ありったけの愛を込めて秋夜に伝える。

「ありがとう。
…俺も、真奈が好きだ。」

秋夜はぎゅっと私を抱き締める腕に力を込め、優しくキスをする。
啄むような優しいキス。
唇に頬に瞼に。
溶けてしまいそうな幸せ。



「…そろそろ…いかなくちゃね。」
「…ああ。」
すると秋夜は最後にぎゅっと抱き締め
「…さっきの話だが…お前はかわいい。
誰にも…見せたくないくらい…」
髪に顔を埋めながらそっと囁く。
そんな言葉に私の顔は火が出たように熱くなってしまう。




出来る限り、ゆっくりと歩いて校舎へ戻る。

「プリン、ありがとう。
少し無駄にしてしまってすまなかった。
今度埋め合わせをする。」
「うん、わかった
じゃあ、またね秋夜。」

そう言って私たちはお互いの教室へ向かう。

いつもよりも甘い昼休みを思い出し、私は教室までの道を軽やかにダッシュするのだった。



次の日の昼休み。
宣言通り秋夜の手にはプリンがあった。


「わあ!ありがとう秋夜!
よく買えたね」
「いや…簡単だった。」

「あれ、プリン二個なのにスプーン一個しかないよ?」

そう聞くと秋夜の顔は一瞬にして真っ赤になる。

「いや…あの…それは
いらない…と
断った…」

小声で白状する。

「そっか!じゃあまた二人で食べようね」

かわいい自白に笑ってしまった私がそう言うと、秋夜は赤い顔のまま嬉しそうに頷く。

今日もまた、甘い昼休みになりそう!






ちなみに目撃者の話によるとプリンを買いに向かう秋夜はまるで鬼神のようで。
その迫力に圧され、人々は秋夜に道をあけてくれたらしい。
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