main

□FROM FAR DISTANCE
1ページ/3ページ

Dear秋夜


お元気ですか?
私は元気です。
大分、寒くなってきたね。
今日こっちでは今年初めての雪が降りました。



秋夜と離れて…
まだそんなにたってないはずなのに
すごく長い時間が経っているような気がする。



秋夜のいない日々に早く慣れなくちゃって思うのに


目に映るもの全部に
周りにあるものすべてに
秋夜の思い出があって

何を見ても寂しくなっちゃうよ。


一緒にご飯を食べた屋上も
こっそり手を繋いであるいた校庭も
初めてキスをした廊下も…

どこにいっても秋夜の顔が浮かんで

知らなかった
世界には
一人で行くには寂しすぎる場所だらけだよ





あの日…
秋夜が決心を伝えてくれた
旅立ちの前の日


突然すぎて私は
秋夜と離れることを受け入れられなくて

寂しくて、ただ寂しくて
秋夜の気持ちを理解してあげることもできなくて
小さな子供みたいに泣いてしまって
ごめんね。
あの時の秋夜の
苦しそうな、辛そうな顔が
今でも…頭から離れないよ。

私が悲しむのが分かっていたから、ずっと言い出せなかったんだよね。
そんな優しさも、理解できなくて。
頑張ってねも言えないで。

意地を張って見送りに行かなくて…ごめんね

最後に見せた顔が泣き顔なんて、彼女失格だね。



私ね、ずっと秋夜と
一緒にいられるような気がしてたんだ。

いつもの場所で待ち合わせをして、
いつも秋夜のが先に来てて
一緒に登校して、
一緒にお昼を食べて、
できるだけ長く一緒に歩ける道を、
選びながら、
一緒に帰る。

そんな毎日が
当たり前みたいに、繰り返されると思ってた。

だからこんな日が来るなんて
思いもしなかったんだ。



あのね、秋夜の事を考えないようにしようとすればするほど
秋夜の顔が浮かんでくるの。

まっすぐに私を見つめる秋夜の目も、
すぐに紅くなるほっぺも、
上手く思いを伝えられない不器用な口も
手を伸ばせば、ぎゅうって
繋いでくれる
その手が大好きで。
大好きで大好きでどうしようもないほど大好きで。


不思議だよ。
秋夜と離れてから、
今までよりも
もっともっと
秋夜の事が好きになってる。

寂しいけど、
秋夜が自分で決めたことを
この同じ空の下で頑張ってるのなら、
そう思ったら私も頑張れる。
頑張らなくちゃ、ね。



秋夜に今度会える時まで

もう泣かない。
弱音も吐かないよ。



だから…

…だから今度、会った時は
いっぱいいっぱい抱きしめて





長くなっちゃってごめんね。
言いたいこといっぱいあるのに、
思ったことの半分も伝えられないや。

体に気を付けてね。
やりたいこと頑張ってね。
秋夜のこと、ずっと待ってる。



また手紙書くね。







大好きだよ、秋夜



12/20 Mon   FROM 真奈









月曜日。
午後の古典の授業は退屈で。
ちらりと横を見ると隣の席では真奈が熱心に何かを書いている。

こいつは、真奈は。
俺の友達の秋夜と付き合っている。
真奈は寡黙で不器用だけど優しい秋夜に恋をして、
秋夜も真奈の明るくまっすぐな性格を好きになって。
二人が付き合いだすのに時間はかからなかった。


真奈は普段、元気でうるさいくて
まるで女だと思えないくらいなんだが…


なんだか最近…様子が違う。

秋夜がいなくなった…からか。




その時、窓から吹き込んで来た風に
真奈の机からふわりと舞い上がる紙。


拾い上げるとそれは手紙

真奈が、秋夜に宛てた手紙だった。



「…あ、ありがと、暁月。それ…」
「…ん、ああ。わりぃ。」

俺の方に手を伸ばす真奈。
ぼーっとしていた俺はそう言われて慌てて返す。


「…見た??」
真奈は上目使いで心配そうに俺を見ている。
「いや、全然見てない。」
「そ。なら良かった。」

ふっと真奈に笑顔が戻る。
‥そう言わざるを得ないよな。

「あのさ…真奈」
「‥ん、なに?」

真奈の目は真っ赤だったように見えたのは

やはり気のせいではなかった。

「‥いや、いい。
なんでもない。」


そんな真奈を見た俺の中には
何とも言えない想いが湧いてきて



なんだかよくわからないもやもやした違和感が俺を支配して



胸の中に何かがつかえてるような、そんな感じがした。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ