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□FROM FAR DISTANCE
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「あのさ、真奈…
俺…
言いたいことが、あるんだけどさ…




























…秋夜って、理系の選択課外授業で4日間、
京都に行ってるんだよな…?」





「ん?そうだけど?」







…やっぱり当たっていた。
俺が感じていた違和感の正体。









…秋夜がいないのはたった四日間だけということ。






「そうだけどじゃねーよ!!
日曜日に行ったんだから…
明日帰ってくんじゃねぇか!
いくらなんでも泣きすぎだろ!
なんだその目は!

たかだか四日間だってのに、
一昨日のお前の手紙といい
この秋夜の手紙といい
今生の別れかと思うじゃねえかよ!
危うく俺までお前らの雰囲気に流されるところだったぜ。
そもそもその短さで手紙とか送る意味がわからねえよ。


ってゆうか秋も秋だ!
何こんな切ないポエム的な手紙、
ノリノリで書いてんだよ!
ガラじゃねえだろうが!!
何が『俺が…選んだ道だ』だよ!
あいつが選んだ授業って
伝統的和菓子の研究だろ?
趣味みたいなもんじゃねえか!
それなのに何をカッコいいこと言ってやがんだ、あいつは!
理想と現実が違うって
あいつ、まさかただ甘いモンが
いっぱい食えると思って選んだんじゃねえのか!
ってか、あいつの手紙、『…』多すぎだから!!
どんだけ口ごもってんだよ、手紙なのに!」



「うるさいな!
だって秋夜、課外授業は春日山薬草研究にするって言ってたんだもん。
直前まで、選択変更したこと教えてくれなかったんだもん。
春日山なら家からなのに、和菓子の方は京都じゃん!!
離れるなんて考えてなかったよ!
寂しいじゃん!
しかも秋夜がいるところ、電波あまりよくないみたいで電話もメールも満足にはできないしさ。

今の私にならわかるよ。
秋夜にとっては苦渋の決断だったんだよ。
あんなにひた隠しにしてる甘党だって事を暴露してでも
和菓子の方を選んだんだもん!
これは辛い道だよ。
それにね、秋夜は口下手だから『…』がなきゃ上手く喋れないの!

ってか暁月なんでそんなに詳しく手紙の内容知ってるの?
うわっやっぱあの時見たんだ!
見てないって言ったじゃん!
ほんと最低!!!
ちょっと覗きとかやめてくれる?
せんせえー、暁月君が私のほう覗いてくるんですけど!!」




「お、おまっ!!!
ふざけんなよ!!!
見たんじゃねぇ、見えちまったんだよ!

それに秋夜の手紙に至っては
お前さっき声に出して朗読してたじゃねえか!
恥ずかしげもなく2回もな!
聞きたくねえよ、友達のそんな恥ずかしいポエム!
どんな罰ゲームだよ!

ってか今は美術だ!
変なポエムの朗読してんじゃねえよ!!
課題をやれ!
今日は自分の顔のデッサンだ、デッサン!
なんだお前のそれは!
猿か!!!!??」


俺はあまりの言われっぷりに
立ち上がり大きな声で抗議を




…してしまった。







その時
バタンと扉が開いた。



「…うるさい奴らだな」

その声に静まり返る教室。
声の正体は、
騒ぎを聞きつけて面倒くさそうに準備室からやってきた教師。俺たちの方へ向かってくる。


「静かに課題を・・・・っ?!

…廊下だ。
荷物纏めて廊下に出ろ、暁月。




…白羽、もう泣くな。
暁月の事は気にするな。

そのデッサン、なかなか良く描けているが、
今日は自分の顔のデッサンだ、猿じゃない。
今はとりあえず課題を早く終わらせろ。

…詳しい話は……俺が後で…
…ゆっくり聞いてやってもいい」
























そして俺は。



真奈を泣かせた犯人が俺だと勘違いした
美術教師の手によって

…机ごと廊下に強制送還された。


うぅ゛…さみぃ…。

なんで俺だけこのくそ寒い中廊下で課題やんなきゃなんねえんだよ…






…ちくしょー。

あのヒゲ面、確実に贔屓しやがって…。
ってか、ほんのり頬赤らめてんじゃねえよ!

んが・・・ぶ・・ぶはくっしゅっっ!!!!
マジさみぃんだけど…・・
やべ鼻水とまんね。



ああ、あのバカップルとロリコンなヒゲ面には二度と関わらねえ。

そんなことを考えながら俺は
北国の冬の寒い廊下でひとり
悲しみと憎しみに満ちた自画像を完成させるのだった。
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