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□メリークリスマス!
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刀儀さんの家までの道を歩く。
暁月と一緒に。
暁月の髪は月の光に照らされていつもより綺麗。

「いやー今日は楽しかったな。」

「めっちゃくちゃ楽しかった!
おなかいっぱいだし満足だー!」

「ほんと、かなり食ってたもんなお前!」

「いいじゃ〜ん!
謙信様だってあの良い声で

『皆の者、今宵は無礼講だ
存分に飲み食いするが良い』

って言ってたし!
だからいいの」

「はははっ!
まあ、そうだな!!
気持ちはわかるけど、似てねえモノマネだな!!

う゛〜それにしても寒いな。」


「ほんとだね〜うわっ!」

雪の山道はつるつる滑る。

「はははっ!
ほんっとに落ち着きのない奴だな、お前は」

転びそうになった私を
ほらよっ、と暁月が支えてくれた


「…あ、ありがと。」

にかっと笑うその笑顔
黙っていれば爽やかなのに、とちょっとだけ見とれてしまう。


暁月の明るさと強さとまっすぐさに
いつのまにか惹かれてた。
友達だと思っていたんだはずなのに
いつのまにか好きになってた。



「ところで、お前は去年まで…いや、ちがうか…
お前の時代にいた時は、
どんな くりすます を過ごしてたんだ?」



「うーん、小さい頃は家族とパーティしたりして過ごしてたかな。
後は、まあ…」

口ごもる。
私の今までのXmasは…


「後はまあ、なんだよ。
歯切れがわりぃな。」

「…いや、別に。」

…何で食いつくの、暁月。
流して、お願い。
いや…
Xmas知らないこの時代の暁月に見栄を張ることもないんだけど。


「カレシってやつと、過ごしてたのか?」

ニヤニヤする暁月。
…誰、彼氏って言葉教えた人?

「…。」

「その顔は図星か?」


「…う、うるさいな!
アンタ知ってて言ってるでしょ?!
ええ、いないですよ。
今までそんな人いたことないですよ!
いつも友達とシングルなベルを過ごしてました。
…好きな人が一緒にいたXmas自体、今回が初めてだっての」

「まあ、しんぐるべる?とか、なんだかよくわからんが
友達と過ごしてたってことだな。」

「そうだよ。悪い?」

そんなにムキになることでもないのに、
なんでこんなに必死になってるんだろう。

毎年この時期になるとみんなそういう話題になるから身構えちゃうんだよね。


「…で、誰だ、お前の好きな奴って?」


「は??」


「…お前、今言っただろ?
好きな人と過ごせた くりすます はこれが初めて、だって。」

「え、私そんなこと言ってた?!」

顔が赤くなるのがわかる。
どさくさに紛れて何口走っちゃってんの私!

「誰なんだよ、翠か?
秋か?雅刀か?
それとも、なんだ瑠璃か?
だめだぞさすがに先代は」

暁月はからかうように言う。
「いいでしょ、別に。」

…なんだか悲しくて…なんだか腹が立って…
私は少し冷たく言う。

「なーに怒ってんだよ、いいじゃねーか!
だけど翠は…きっと、もっと淑やかな感じが好きだと思うぞ。
秋は…そういうのよくわからなそうだな。
雅刀はもっと大人な感じの女が好きだろうな」



「…うるさいな!
暁月には関係ないじゃん!」


「なんだよ、それ。
俺とお前の仲だろ?」

いししと笑う、笑顔の暁月を見て悲しくなる。
私がどうであろうと関係ないって言われてるみたいで
ぐちゃぐちゃになる。
…そんな仲になりたいわけじゃないのに。
私の思いは頂点に達する。

「あーもうほんとに無神経だな、暁月は!!
ちょっとくらい察してよ!!
誰がクリスマスの夜に
好きでもない人と一緒に歩きたいと思う??!!!!」





…ああ…言っちゃったよ
これじゃちょっと告白みたいじゃない。
どうするの、これ。


二人の間に流れる沈黙。
今までうるさかった暁月も静かで。
私は顔を上げられないから表情が見えない。


…何か言ってよ。
いつもみたいに軽口叩いてくれきゃ

…冗談に…できないじゃない。





「なーんちゃっ…」


苦肉の策で、私が無理矢理ごまかそうとしたその時
すっと差し出された、手。

「…ん。」

「…何これ。」

「ばか…手だよ。繋ぐか?」


今度は私が呆気にとられ黙ってしまう番。

「…おい、やめろ、その間。
あーもういい!!貸せ!」


そういって
半ば強引に、とられた手。


「あ、暁月…?」


びっくりする展開に頭がついていかない。
「…あんまり、見るなよ今の俺の顔」

そういって暁月は歩き出す。


「なんつーか…ありがとな。
嬉しい、なんだかすごく。
俺、お前の好きな奴って誰なんだろうって…なんか、すっげえ怖かった」



暁月は前を見たままで言う。
暁月の顔はその髪と同じくらい朱い。

「ふふっ」
「何だよ、気持ちわりぃな」

そんなことを言いながらも暁月の顔は優しくて。
私は嬉しくてその手をぎゅっと握る。




私たちはお互いの温かさを感じながら、残り少ない家までの道を
ゆっくりとゆっくりと歩くのだった。
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