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□Second Impression
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年の瀬も迫ったある日。
今日はみんなで大掃除の日。

「御使い様のお手を煩わせるのは誠に遺憾ではござるが
ご覧の通り今は人手が足りない時節。
お願いできますかな。」

という刀儀さんの依頼を受けて今日は張り切ってお掃除。
はたきを持った私がまず向かったのは雅刀の部屋。



「お邪魔しちゃいますよー」
いないはずだけど一応声をかける

するとそこには




「あ、あんた!!!
ななな、なに勝手に入ってきてるんだ!」

…なぜか大慌てな雅刀がいた。






「私ちゃんと言ったよ、お邪魔しますって。」


「バカあんたの場合、
もう入ってきてから言ってただろう!」

「そうだったっけ?」

「ああもう、よりによって何でこいつなんだよ!」

頭を掻く雅刀はいつもと様子がちがう。
ってゆうかあからさまに様子がおかしい。
なにかを背中に隠している。

「ねえ、後ろに持ってるのそれ何?」

「なんでもない!
あんたにだけは、まったく全然決して関係ない!」



……。
何その言い方。
ものすごく怪しいんですけど。



「じゃあ何その慌てっぷり!
どうせ私の悪口とか書いてるんでしょ!
見せてよ!」
あまりにひた隠しにされるとこっちだってムキになってしまう。
私は雅刀に近づき、背中に隠している物を取ろうとした。


「おい!
こら、離せバカ!」

「いいじゃん、もう何言われてもへこまないよ私。
気になるから見せて!」


「いや、ち、違う。
ちょっ、こら、離せ!」

雅刀がなぜか一瞬隙を見せた瞬間に、隠してる紙の端を掴むことができた。


「怒らないから!
ちょっと口利かないくらいだから!
見せて!」

「あんたな!そんなの耐えら…
…いや違う!そうじゃない!
いいから早く離せ!」


私と雅刀はお互い一歩も引かず、紙を引っ張り合っている。
裏返しだからなんて書いてあるのかわからない。

「意地っ張りっ!」

「あんたもな…っ!」


私たちがそんな引っ張り合い続けていると突然。



「御使い様、オレも手伝いにきた…よ…

…って、何してるの二人で?」

部屋に入ってきた瑠璃丸くんに声をかけられた。
突然の瑠璃丸くんの乱入に
面食らった私たちは
同時に紙から力を抜いてしまったらしく



その紙はひらひらと



瑠璃丸くんの足元へ。


「ん?何これ?」

足元に舞い落ちた紙を拾い上げる瑠璃丸くん。


「瑠璃丸っ!!読むな!
頼む!どうか!頼むから!」




雅刀はこれ以上ないほど慌てている。


だけど時は既に遅くて。

「ふうん、そうだったんだ。
わかったよ、雅刀。」

読み終わった瑠璃丸くんは、にっこりと雅刀を見ている。
当の雅刀はというと、
項垂れて座り込んでしまっている。



「ねえ!瑠璃丸くん!
なんて書いてあったの?!
うるさいとかおてんばとか?!」

私は瑠璃丸くんに駆け寄って尋ねる。

それに気づいた雅刀は必死な顔で
遠くから腕で×をつくり首を振って制止の合図を送っている。ぱくぱく動いている口は
おそらく「やめろ」といっているんだろう。


「ごめんね、御使い様。
これはさすがにちょっと雅刀が可哀想だから
教えてあげられないや。
オレに免じて、もう諦めてあげて?」

苦笑しながらいう瑠璃丸くん。…そうまで言われたら引き下がるしかないよ。


「…わかったよ。
瑠璃丸くんがそこまで言うなら」

「ありがとう御使い様。」

苦笑する瑠璃丸くんと、
それを聞いて胸を撫で下ろしている雅刀。

「それに心配しなくても
そのうち雅刀が言うだろうからさ。」

なんだか意味深なことを言う瑠璃丸くんに、雅刀はまた顔を赤くして無言で抗議している。



「うん、わかった。
…って、やば!!!
こんなことしてる場合じゃなかった!怒られる!
雅刀がここにいるなら、私違うところ掃除してくる。
後よろしくね!」

そう言って私は雅刀の部屋を出る。
紙に書かれたことを知る日が本当に来るのかわからないけど、とりあえず今は確実に来る新年のために大掃除をしなくちゃ。私は刀儀さんに見つかる前に、大急ぎで家中にはたきをかけて歩くのだった。









「…瑠璃丸…なんていうか…
…ありがとうな。」

苦笑いする瑠璃丸。
賢いやつで本当によかった…。
「気にしないで。
軒猿同士の絆ってゆうかさ。
さすがにあれを見られちゃたまらないよね。」
「ああ…だからできればお前も忘れ…」
「それにしてもさ、雅刀ってあんなに字汚かったっけ?
オレがいうのもなんだけどさ。まるで子供の字だよね」


「…ほっといてくれ。」













その紙に書かれたもの。
それはまだここに来たばかりの頃の幼い俺が書いた

あいつへのラブレター。
届けられないラブレターだった。










「…しかし、なんでこんなもんが今さら出てくるんだよ…。」
紙切れをまじまじと眺める。
瑠璃丸が言ったように確かに汚い字だ。
汚いが、想いだけは
痛いくらいに伝わってくる。


「…それにしても…
『まながすき』か。
…変わってないな、俺も。」

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