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□目覚めて、幸せに触れる日々
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ピピピピ…ピピピピ…




朝を告げるアラームの音で眠りから覚める。

AM7:00

布団に入ったまま左手を伸ばし、
よく見もせずにアラームを止める。



隣を見ると勘助が静かに寝息をたてていて
その白い髪は、カーテンからこぼれる朝日を受け、
銀色の糸のように輝いて
白い素肌によく映えて…




ってあれ?
勘助なんで裸…?







って、ちょっと待って!









あわてて布団をめくってみると…
…やっぱり私自身も下着すらつけていなかった。




「一糸纏わぬ姿ってこういうことだね…」

しみじみと自分を眺め呟く。




ふとベッドの周りを見るとそこには
ブラジャーと一瞬だけしか着なかったパジャマが散らばっていた。
ショーツはたぶんこの布団のどこかに紛れ込んでいるんだろう。
昨晩の情事をふと思い出して、私は一人赤面してしまう。










身体中で身に付けているものは指輪だけ。

指輪は結婚したあの日から
一度も外したことがない。

二人で選んだ結婚指輪はとてもシンプルで
私の方にだけ小さなダイヤがあしらわれている。
裏にはお互いの名前と記念日が彫ってある。
といっても指輪を外すこてはないから、
私たちがその文字を見ることはないのだけれど。



左手を宙にかざしてまじまじと指輪を見る。


「…ふふっ。」

結婚したことを実感して
ついつい口許がゆるんでしまう。


布団から覗く勘助の左手にもお揃いの指輪が光っていて
それを見る度に、幸せな気持ちが溢れ出す。


って、こんな事をしてる場合じゃない。
ふと時計をみるともうすでに10分たっている。
私が甘い幸せに浸っている間にも、朝の貴重な時間は刻一刻と過ぎていっていたのだ。








とりあえず勘助を起こさなくちゃ。



「勘助、朝だよ。起きて。」

隣でまだ眠っている勘助に静かな声で呼びかける。



私の声に微かに反応した勘助は眉間にしわを寄せ、薄く目を開くが
私の姿を確認すると安心したように、またすぐに目を閉じ再び寝息をたて始める。


「もう…っ勘助ってばまた寝ちゃダメだよ!」






気のせいかもしれないけれど
この時代で出会ってから…
…特に、結婚してから…
なんだか勘助は
とても人間らしくなったように思える。


今までより食事もとるようになったし、
眠りも深くなった。
低血圧なのか、朝起きるのが少し苦手みたい。







勘助が人間らしくなってきたことは
私にとってとても嬉しいことで…


朝なかなか目覚めない勘助を起こす事にも幸せを感じる。


だけど…
時計はもうすぐ7時15分をさす。
さすがにもう本当に起こさなきゃいけない。




「ねえ勘助、時間だよ。」

身体を揺するが、
一向に起きる気配がない。
こうしている間にも時間は刻々と過ぎて行く。










…仕方ない、最後の手段。

私は勘助の頬に軽くキスをする。

不思議なことに頬にキスをすると、勘助は目覚めるのだ。
まるで眠り姫のように。



そっと唇を離すと…
勘助はゆっくりと目を開く。





「ようやくか。
…待ちわびたぞ、真奈。」


「えっ?」


聞き返す言葉は届くことなく
私は手首を掴まれ身体を反転させられて…
いつの間にか仰向けにされてしまっていた。




妖艶な微笑みを湛えるその瞳に捕らえられる。


勘助は私の手首をベッドに縫い付け、
そのまま唇を塞いだ。



唇の間から入り込む舌が中を動き回り、私の舌捕らえる。
何度も何度も角度を変えてくちゅくちゅと絡められる舌。

「…ん…」


突然のキスに心の準備ができていなかった私も
繰り返されるキスのその甘さが心地よくて、ゆっくりと瞳を閉じる。
















「おはよう。
今日はいつもより随分遅かったな。」

唇を離した後、勘助が言う。

「え?」



勘助は、きょとんとしている私の頬をそっと撫で
ちらりと時計を見る。



「ほう、やはりこんな時間か…
オレはシャワーを浴びてくる。
お前もそろそろ起きるといい。」
そう言うと勘助は私にもう一度軽いキスをして
バスルームへと向かった。





…起こしてたのは私だけど?!
…ってゆうか、待ちわびたって何?
起きてたの?
……ってゆうか…いつも起きてるの?!!





取り残された私の声は勘助の耳に届くはずもなく…
私は開いた口をふさぐことができずに
勘助の背中をただただ目で追っていた。




「って大変、こんなことしてる場合じゃない!」


時計を見て私は飛び起きる。
急いで散らばっていたショーツを探し、下着をつけ、服を着て、パジャマを簡単に畳み化粧台の椅子に掛ける。






忙しい朝の始まりだ。






 
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