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□終わりへ向かう はじまりの歌
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いつからかすっかり日課になった
手習い帰り、ふたりだけ内緒の寄り道
夕陽に染まる金色の野で
楽しそうにはしゃぐその姿は
まるで幼な子のようで
まるで天女のようで


御使い様は不思議な方です
無邪気で、可愛らしくて
だけどとても強い心を持っている
太陽よりも眩しく、あたたかい貴女は
私の凍った心を熔かしてくれました
まるで長い冬に終わりを知らせる
春の光のように

貴女と見る世界は美しすぎて
とうに決めたはずの心が
こんなにも立ち竦んでしまう


貴女が在るべき場所へ帰ること
貴女の幸せを願いながら
あろうことか私は、いつからか
遙か遠い先の世で
貴女の側にいられる誰かに
その手を繋ぎ、その涙を拭える
顔も知らない誰かに
嫉妬してしまっている


共に在りたい
そう願う事など決して許されない
後ろ暗い身だというのに

私はなんと欲深く、浅ましい


涼しさを孕み始めた夕暮れの風が告げる
北国の短い夏の終わり
こんなにも幸せな夕暮れを、私は
あとどれくらい過ごせるのでしょうか。



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