朝の風景








「…な」

遠くから呼ばれてる気がする。

誰?

「…な、真奈」

ああ、勘助の声だ。
心地いい…。
でもなんだろう、体じゅうが…ものすごく…だるい。

「真奈、起きろ。
遅れるぞ。」

遅れる…?
学校!!!!!!
やっばい!!!!!!!!


ガバッと起き上がると。
すぐ目の前に勘助の顔。
私に覆い被さるような状態。

「うわっ!!!!!」

「お早う、真奈。
今日は随分とよく眠っていた。
よほど疲れていたのだな。」

勘助はそういうとちゅっと頬にキスを落とす。
勘助の顔を見て思い出した、この倦怠感の理由。
疲れていたのだなって他人事みたいだけど、

「オレの上でよがる真奈がみたい」っていって、散々やらせたのは勘助じゃない。
そんな私の非難めいた視線を感じたのか。


「ん?なにか言いたそうだな。」

余裕そうな目つきで妖しく笑う勘助。

「…べ、別にっ」
昨晩の事を思い出して恥ずかしくなった私は思わず目を逸らす。
すると勘助は私の顎をくいっと自分の方へ向け、更に顔と顔を近づけ

「どうした、随分とご機嫌斜めだな。
あれはあれで…たまには良かっただろう、なぁ?」

耳元で低く囁く。

そして今度は唇にちゅっとキスをする。

…ああ…そんなとこまで全部解ってるんだね…

なんだか自分がひどく無力に思えて小さくため息をつく。

すると勘助は顔にかかっている私の髪を耳にかけながら、優しく微笑む。

「機嫌を直せ、真奈。
朝はお前の笑った顔が見たい。」

髪にちゅっと幾つかキスを落とす。
おでこ、目の横…顔の上から徐々に降りてくるキス。
そして耳元にちゅっとキスを落とし、

「夜は…啼き顔が見たい、がな」
そう囁くと、はむっと耳たぶを甘噛みする。

「……っ!!!」
思いがけない行動に硬直してしまう体。

そして勘助はキスを首筋に落としてゆく。
起きなきゃいけない

だけど

ちゅっ…ちゅっ…と
カウントダウンのように徐々に下に落ちてゆくキスに、思考を奪われてしまう。
勘助の手が体のラインをなぞる。
あと少しで胸の膨らみに触れるか触れないかと言うところで、勘助は手を止める。

次に来るであろう感覚をいつのまにか期待していた私は驚いて勘助を見ると
「オレとしてはこのまま続けたいところなのだが…
お前、学校はどうするのだ?
一限は古典…と言ってなかったか
起きないのなら、このまま…」

少し意地悪な表情で言う勘助の言葉に我に返る。


ただでさえできない古典。
出席点がなくなったら単位が危うくなる。

「…や、やばい!!!!
あれもう後がないんだ!!!
お、起きる、起きます!!」

と言って私は少しはだけたパジャマの胸元を掴み起き上がる。
名残惜しいけどこのままじゃ本当に学校いけなくなっちゃう。
勘助とずっと一緒にいたくなっちゃうから。
勘助に、もっと触れたくなっちゃうから。


「そうか、それは残念だな。

まあいい。
続きはまた後で、な。」

ちゅっとキスをして私の頬をなでると勘助は寝室を出ていく。

時計を見ると、始業に間に合う最後のバスの出発の5分前。
ここからバス停まで2分としてもあと3分。
本当に時間がない!!
やばいやばい!!
大急ぎで私が制服に着替えていると

「真奈、これをもっていけ。」

勘助が小さな包みを手渡してきた

「朝飯を食う時間がないだろうと、作っておいた。
今朝は起きるのが遅くなるだろうと思ったからな。」

中をみるとそこにはおにぎりが2つ入っていた。

「懐かしいだろう?」

と勘助は微笑む。
懐かしい思い出が溢れ出して、勘助の優しさが嬉しくて。

「ありがとう…勘助…
大好き。」

私は思わず抱き着いてしまう。

すると勘助は腰に腕を回し、ぎゅっと抱きしめ返してくれる。
大好きっていう気持ちがあふれてすごく幸せな気持ちになる。
勘助は優しく微笑み、私を抱く腕にぎゅうっと力を込めて。


「…本当は学校になど行かせたくはないのだがな。
お前はずっとオレの傍にいればいい。


…早く卒業しろ、そして早く…本当に、俺のものになれ」

幸せすぎる言葉。
嬉しい涙があふれてきて。
「うん、私も早く…なりたい。」
と私が言うと勘助はちゅっと一つ唇にキスをする。


「もうバスには間に合わんな。
送ってやる、いくぞ」

そう言うと勘助は、私の手と車のカギを手に取って駆け出す。

いつも少し強引で、だけどとても優しいこの手をずっと離したくない。
この人と…ずっと一緒に生きていきたい。
心からそう思った朝だった。





2010.12.6




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