短編集

□愛してる
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オレが左之さんのことをこう思うようになったのは、いつからだろう?

初めはちゃんと仲間として大切だった


でも…新八っつぁんと左之さんと一緒にいるうちに、左之さんを違う意味で大切になってしまったのはいつからだろう?

左之さんがオレに向ける表情や言葉に一喜一憂しだしたのは、いつからだろう?

よくわからないけどただ一つ、オレにもわかることがある


オレは左之さんが、好きだ









「おーい、平助っ」

『ッ…左之さん!なんか用?』



期待しちゃいけないってわかってる

だけど、そうやって笑顔で話かけられたらそんなこと…どうでもよくなっちゃうんだ


やっぱり左之さんって、笑顔が似合うなぁ…



「今から新八と島原に行くんだけどよ、平助も行くか?」



…前言撤回

そんな嬉しそうにしながら言わないでよ

なんか腹立つ



ってんなこと考えてもしょうがないか

…左之さんもてるし



「どうする?」

『んー…オレはいいや』



本当は一緒にいたいけど、女の人見てる左之さんは見たくない

だからオレは、行かないことにした

この先も、この想いが無くならない限りは行かない



「平助、最近付き合い悪いなぁ…。なんかあったのか?」



原因があるとすれば左之さんだよね

本人には言わないけどさ



『んなことねぇって!…ほら、左之さん楽しんで来なよ!』

「お、おう…」










『はぁーーーーーっ…』



…行っちゃった

いつも三人でいるだけあって、やっぱり一人じゃ寂しいものがある



『一君のとこに行こうかなぁ…』




…………………


駄目だ、一君には総司がいる

…付きっきりで


二人ってどうやって恋人同士になったのかなぁ?





『…じゃあ土方さん?』



恐いからやだ





『それとも山南さん…?』



よけい恐いからやだ


あ、いや、別に土方さんや山南さん自体が恐いんじゃなくて…

醸し出してる雰囲気が、ね




オレには恐い、うん




オ、オレは別にここここ、恐がりなんかじゃねぇ、し…













自分で考えて恥ずかしくなった

もう寝ちゃおうかな

うん、そうしよう




せっせと寝る準備をする

やっぱり寝るときは抱き枕がないとな!




「…あれ、平助?もう寝るの?」




…総司だ




『どうしたんだよ?』

「なんか一君が平助の部屋からぶつぶつ声が聞こえるって言われて来たんだけど…」



やべ、全部漏れてたんだ



「珍しいね、こんなに早く寝るなんて」

「…まだ七時だぞ」




あ、一君もいたんだ




『もうやること無いからさー』

「寝ちゃおうって訳ね」

「…なるぼど」



そゆこと




「僕、てっきり平助も島原に行ってるのかと思った」



あー…うん、いつも行ってるもんね



「……なにかあったのか」




は、一君…鋭いね



『別に何もないけどさー…』


「左之、か?」



ま、ね

一君はオレが左之さんを好きってこと知ってるからね



「…あー、なるほどね分かったよ」



それだけでわかる総司も凄いと思う





「あれ、でもおかしいな」

「…ッ!総司、それは…」

「あぁ、喋っちゃいけないんだっけ?」



こくんと頷く一君

可愛いなぁ…



てか何の話だろう?





「ま、頑張れ」

「応援してるぞ」

『うん、二人ともありがとう』



そう言い残して二人は部屋に戻って行った

結局、何のことか聞けなかったなぁ

まいっか




『さーて、オレは寝ようかな』


そうしてオレは、夢の世界へ───


























なんか遠くで、がたがた音が聞こえる

……足音?

左之さんが帰ってきたのかな?




「───…け、へい…け」



あ、左之さんだ

独り言言ってると禿げちゃうよ

やだよ、禿げてる左之さんなんて…


いやでもちょっと笑えるかも




「…平助、平助」




あ、オレを呼んでたのか





『ん…な、に』



眠くて目が開かない

ごめん、目ぇ瞑ったままだけど許して…




「悪いな、寝てるのに」

『ほ、んと…だよ』



あぁ、眠い




「さっき総司に合ってな…いいかげんにしろって怒られたよ」



…それがなにさ




「悪いな、今まで。お前も同じ気持ちだって気づかなくて」



…?

なんのこと、だろ…














「俺はお前が好きだ」




ん、オレも………って、え?



「お前は普通に女が好きって勝手に思いこんでたからな、気持ちに気づけなかった。悪い」




………………。





「平助が好きだ、愛してる。だから…愛想尽かさないでくれ…」





『…って、えぇぇえぇ?!』



がばっと起きあがる

脳味噌が一気に覚醒した!

すごい!!




『…じゃなくて……、あれ?』



何を言おうとしたんだオレは!


左之さんを見るとびっくりして固まってる




『ああああ、あの…えっと…』

「へ、平助…」



驚いたよと言って笑う左之さん



いやいやいやいや、オレの方が驚いたよ




「平助、返事は?」



そんなのもちろん────























『オレも、愛してる』






























───その後



「いやぁ、よかったねぇ」

「本当だ」



って言ってくれる総司と一君

けど…



「俺はよくねぇぇぇぇぇぇ!!!」



と叫ぶ新八っつぁんがいましたとさ










愛してる
(うるせぇよ、新八。なぁ?平助)(あぁ、オレと左之さんの仲を邪魔すんな!)(いや、ここ俺の部屋だから!)





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