短編集

□月のような
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「平助は太陽みいだな」



そう言うアンタはきっと、





闇夜も照らす月だ












「平助っ!へーいーすーけー」


んんっ…左之さんが呼んでる…

起きなきゃ…な、ぁ…



そんなこと考えながらオレは眠いから眠りにつく

太陽が気持ちいいんだよ…








「へいす───って何処で寝てんだよ」




左之さんの声が近くでしたなぁ…と思ってると、不意に頭を撫でられる



「平助、起きろ。風邪引くぞ」

『……ん、へ…きだ…よ』

「馬鹿、平気なもんか。春だって夜になれば寒いんだよ」




分かってる

分かってるから……もう少し寝かせて



オレが睡魔に勝てず寝てると…



「今ここで襲うぞ…?」



左之さんの甘い声が聞こえる


襲われるのは嫌だなぁ…

そう思って目を開けるとすぐ近くに左之さんの優しい笑顔



「おはよう」



そう言って優しい接吻をくれた






ふわぁ…と欠伸をしながら起き上がる




『どうしたのさ、左之さん』

「どうしたのじゃねぇよ。なんでよりによって縁側で寝てんだ。襲われたらどうする」




…オレを襲うのは左之さんくらいでしょ

とか思いながら平気だよと返す





「なぁ平助…花見、しねぇか?」

『花見?』



急にどうしたというのだろう




「あぁ、桜がいい感じに咲いててな…。それに今日は新月だ」

『夜桜かぁ…うん、うん!いいねぇ!』

「だろ?じゃあ夕飯食い終わったら玄関だからな」

『おう!』

「あぁ、酒は俺が準備するから安心しろ」

『ありがと!左之さん』

「平助のためならお安いご用だぜ」




二人で縁側に腰掛けながらのんびりと過ごす

こんな時間が凄く幸せだと感じる


しっかし、夜桜!月見酒!楽しみだなぁ…










『左之さんお待たせっ!』




夕飯を食べ終わって準備をしに部屋へ行こうとしたら総司に呼び止められ少し話し込んでしまった


玄関に寄りかかりオレを待つ左之さんの元へ走る




「そんなに急がなくてもいいんだぜ」



オレに気づいた左之さんは笑いながらそう言った




『左之さんと花見だよ?!急いじゃうに決まってんだろ!』



オレも負けじと笑みを返す



「それじゃ、行くか」




そう言って左之さんは歩き出した

オレはその後を付いて行った





























『うわぁ…すげぇ!』

「だろ?」




何処に行くのかと聞いてみれば、とっておきの場所だとしか言ってくれず、ただただ付いて行って付いたのがこの場所



横には川、目の前には桜

桜に見いっていると川のせせらぎが聞こえ、なんとも言えない感情がオレの中にできる


そこにあった桜は、言葉にできないほど美しかった





左之さんはその桜の幹に座る

座って俺を見ると優しく笑い手招きをした



『どうしたの?』

「いいから、ここに座れ」



左之さんに近づくと、左之さんは自分の横を叩いて座れと言う

オレは素直にそれに従った


オレが座ると酒を差し出してくる

それを受け取り、乾杯をして一気に仰いだ



『うっめぇー!』

「だな」



そう言い合って桜の木に寄りかかり上を見る


そこには満開の桜

時々風に揺れて花弁が舞う


思わず見惚れていると左之さんは突然言った





「平助は太陽みたいだよな」

『…え?』

「太陽みたいで眩しくて……時々不安になる」

『……』

「手が届かなくて…さ。俺にとっては平助は眩しすぎる」



そう言って左之さんは苦笑いした

何を不安に思っているのだろうか?

オレには分からない

けど……



『オレだってそうだよ』

「え?」

『左之さんが眩しくてしょうがない。けど…』



ふとそこで上を見る

桜の間から見える、綺麗な月を見た




『オレが太陽だったら左之さんは月だよな』

「俺が、月…?」

『あぁ。そりゃ、太陽よりは輝いてないけど、月は闇夜も照らすんだぜ?月が無かったら夜だってのにこんなに明るくなんかない』




そして左之さんを見る



『左之さんは十分に明るい。左之さんがいないと太陽も輝けないよ、きっと』

「そう…だな。そうだといいな」



















「……ってことは、平助は俺がいないと輝けないのか」

『え?!』

「可愛いこと言ってくれるな」


そう言って左之さんはオレの頭をくしゃっと撫でた





図星だけどその通り

オレは左之さん無しじゃ、生きていけないから










月のような
(アンタに、惚れたんだから)





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