人間不信者 小説
□一
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そっと音をたてないように襖を開ける
『…寒っ』
立て付けのいい家とは言えないため、風が通り抜ける
薄い寝巻き一枚ではとても寒かった
一旦襖を閉め、上着を羽織ってからまた開けて部屋の外に出た
そして気づく
家の中が物音ひとつしていないということを
なまえが歩く音、すきま風がびゅうびゅうと鳴っていることしか聞こえなかったのだ
『あ、れ…?』
どうもおかしい
さっきまで騒がしかったのに、今はまるでそれが嘘のよう
『…おじさん…おばさん』
急に不安になり、急いで部屋へ戻り自分の刀を取りに行く
この一年、刀を使うことは無かったため錆びていないか心配になったが、それは大丈夫だった
なまえが住んでいる家は町の皆が住んでいる家より少し外れにあった
だから、夜は騒いでもあまり気づかれない
昼間はこの辺りには一軒しかない傘屋のため、たくさんの人がいるのだが
とにもかくにも、夜間に客…子の刻に客なんておかしい
もうとっくに店は閉まっている
なまえはゆっくりと…しかし確実に玄関先へと歩を進めて行った
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