●企画文

□祝・深司誕〈H注意H〉2006
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平日の、その日…

   11/2(木)
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「泊まりにおいでよ!」
恋人の部活が終わるのを待ち構えていた千石は、
元気一杯、かつ、首を傾げて少しの愛らしさを意図的に秘めた佇まいで
校門から神尾と出て来た伊武深司に声をかけた。

 ----何と言っても、恋人のお誕生日が祝日なんて美味しすぎー!!
 日付が変わる時に直接甘々なお祝いの言葉を贈りたいv
 できたらその時はベッドの上で二人ギューッと密着していたーい☆

そんなやまし…くはない、恋人として当然の発想でかけた言葉は
下心を必死で隠していたけれど
いつも以上に弾力性を感じさせる鼻の下が全てを物語っていた。

伊武の隣にいた、どちらかといえばソッチ方面に鈍い神尾すら
気を利かせる程にわかりやすい誘いだったので、
「あっ、そーだよな、明日の夜とかはオレたちや家族でお祝いするしな!じゃあ先に帰るぜ!また明日な!」
納得し物わかりの良い態度で親友に顔を向け、意味ありげにニッコリと笑う。
「神尾…、ちょっと…」
「さよなら千石さん!」
「神尾くんはイイコだねぇ〜!ウン、またねー!」

伊武が渋い表情で口を開きかけた時にはもう、
神尾は腕をブンブン振りながら掛け去っていく所だった。

「伊武クン、泊まりにおいでよ!」
あっと言う間に遠ざかる神尾の背中を見送る視線は、すぐに隣の恋人に向けられ、
覗き込む様に屈み、先程のセリフを繰り返す。

伊武は少し考える様な素振りをみせたあと
外泊する旨を母親に伝えるために、溜め息をつきながら携帯を取り出した。



夏からこっち、千石の家には何度も泊まった。
鍵のつく部屋と、家族の生活時間帯の違いと放任主義ぶり。

女の子を連れ込むにはさぞかし都合が良かったろうと、
一度そんな嫌みを伊武が言った時、千石は本当に困った表情で必死に過去は過去だと訴えたあげく、嫉妬だったら激ウレシイ、とか言いだしいつもより夜が激しくなったので、
それからは、心情を晒すような嫌みを伊武は二度と言っていない。


出会ってから初めて迎える誕生日。
それを千石の部屋で過ごす事になるなんて、去年は考えもしていなかった。
テニス雑誌に載っていたJr選抜の記事、どうしてもこちらの現状に比べて卑屈に考えてしまい、
ムカつくいけすかない私立校のいかにも軟派そうな、実のない感じのこの男、よくまあ選ばれたよね、と軽く眺めていた選手の記事。

  …まさか、この人にこんなに魅かれて、求められるようになるなんて。

そんな事をぼんやり考えていた伊武は、近付く顔にハッとして焦点を合わせる。
今ではもう見慣れた嬉しそうなその笑顔が、ベッドに背をあずけて床に座る伊武に寄せられた。

「伊武クン、今夜は日付が変わるまで起きていようね?」
「…どうせいつも、すぐには寝られないじゃないですか…」
軽く目を伏せポツリと口答えする様子に、千石は声を出さずに肩を揺らし笑う。
笑みを形作ったままの唇が、軽く伊武の唇に触れて離れ、そしてまた触れた。

次第に深く口づけられるにつれ、背に当たるベッドで逃げ場がなく、首を仰け反らせて伊武はそれを受け止める。
反らした首を支えるように、千石の手のひらが、優しく髪を掬って項へ添えられた。
絡ませた舌はじんと痺れるように柔らかくぬめり、呼吸が乱れると濡れた音を立て一旦離れ。
けれど空気を取り込む間もなく、
すぐに角度を変えて舌を吸い上げようと覆いかぶさって来る熱い身体。
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