●企画文

□そのA【左右】
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『なんで好きでもない人とつき合わなきゃいけないんですか』

話を聞いた神尾が
プリンアラモードを食べる手を止め、目を丸くする。
「深司がそー言ったんですか!?」
「ウン…」
「そりゃおまえ、きっぱりフラれてんじゃねーの。」

すっかり恋愛悩み相談室と化したファミレスの一角。

「そんな事ねーよ!」
「…ンでおまえが反論するんだ?」
「だって深司は…-----」
「何、神尾クン」

「あ、えっと…だってよぅ…
嫌いな奴に深司は容赦ないぜ?だからー…、だからな!」

「うん、それは判ってるんですがねェ神尾クン、目が泳いでるよ?」
「おまえ何か伊武から聞いてンのか?隠すな。吐け。」
じゃねーと、いつまでもこの相談室は続きそうだ。

「言わねーって約束したから言わねー!」
「やっぱり。言え」
「神尾ク〜ン…」
「ダメだ!もうオレ喋らねェ!」
賢くも神尾は黙秘を決め込む。
猛スピードで空になっていくガラスの器を眺め
それならそれで良い、と跡部は思い、

「じゃ、行くか神尾」
「おう!」

神尾を連れて席を立つ。
神尾も今度ばかりはそそくさと
千石の前から逃げるのに協力的であった。
千石は長く息をつき同時にソファにだらしなく沈む。
そしてヒラヒラと、力なく手を振り

「デート楽しんでね〜ラブラブカップルさ〜ん…」
「るせぇ!そこで死んでろ!」


外を歩きながら、神尾は首をかしげた。
「なぁなぁ跡部〜、千石さんには言うなって約束だから
おまえには言ってもいいよな」
「アーン?」
「深司はさ、千石さんのコト好きなんだよぅ…」
跡部は片眉を動かした。
「へぇ…タデ食う虫もだな…」
「?タデ?」
「それで?なんでアイツら平行線なんだ?」
「だよなー。わかんねーよなー。明日深司に聞いてみる。」
「や、余計な首突っ込むな。ろくな事ないぞ。絶対。」
「なんでだよ!あ、今夜深司ん家に泊まりに行こうかな♪」
「あ?」
よし、そうしよう!と笑顔で携帯を取り出す神尾に呆れる。
そしてムカつく。

お前は今日、俺様んトコ来るんじゃなかったのか!?

「オイ、帰るぞ!」
「へ?」
急に携帯を取り上げられてキョトンとする神尾。
ぐいと腕をとられ、有無を言わさず歩かされる。
「でもCDショップ寄りたいっつってたじゃん!」
「今度にしろ。今夜は帰さねェからな?」
「……え、え〜〜っ!」
ったく!しようがねぇな、跡部はわがままで!

ワケがわからず心の中で毒づく神尾だったが、
その顔は(今夜は帰れねーのかぁ…)という思いで真っ赤だった。
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