●庭球文

□シリアル
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  シリアル・タッチー
(畏れ入ります、ベカミ前提です)

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それは夕暮れどき。
跡部は部長としての責務を終え、ひとり部室を出た。

今日は珍しく自分が最後。
あとは鍵を締め、帰るだけだったのだが…


「跡部。」


背後からかけられた声に
跡部は心底イヤそうに顔を歪め、振り返る。

その声の主を、この場で見るのは初めてだった。

いつもは背筋を伸ばし爽やかに陽の下を行くその人物は、
若いのに良く出来た好青年という印象を広く持たれており、
さまざまな面で高い評価を受け、周囲の者に慕われている。

だが、今、
跡部が振り返り見るその姿は、
軽く背を壁にあずけ横柄に腕を組む姿。
その表情は、爽やかとは言い難い陰湿で攻撃的な笑みを浮かべ
眼光は鋭く、敵意を感じるまでに跡部を射抜いていた。


「…てめぇに用はないぜ、橘。」
「お前は無くとも、俺はあるんでな」

普段ならシカトをきめこみ、スルーしてしまう事態だが
橘から放たれる威圧感に跡部の両脚は地に縫い止められたまま。


跡部はゴクリと生唾を呑む己に気付き
自らを心の中で叱咤する。

(この俺様が何を怯む必要がある?)

しかし、心当たりはないが跡部には判っている事がひとつ。

確信-----いや、むしろ橘と跡部が揃う時
たとえその場にいなくとも、2人を介する事象は、
ある人物についての事でしかありえないのだ。


「…俺様と神尾の問題にテメェが口出しすんな。」

「ほう、何か問題があったのか?」

「………。」

(…無い…はずだ。最近は神尾とうまくいっている。
 昨日だってあいつは家に泊まって…
 寝起きも上機嫌で不動峰の朝練に行ったはずだ。)

いつの間にか爪がくい込む程強く握っていた手のひらが
ジットリ汗ばむのを感じる。

(朝練か…。遅刻はしてねぇよな?…てことは何だ?
昨日ヤリすぎちまったか?…いや、神尾は今朝も
 デタラメな速さで走っていたしな…今さらだろ。)

橘の怒りを買うような事はしていない…はず。
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