●庭球文
□映画鑑賞
1ページ/2ページ
こんな暑い日にデートなんて。
ぶつぶつ言っていたら、千石さんが「映画館なら涼しいよ」というので今日は映画館まで来ている。
昨夜は神尾につき合って夜中までゲームしていたせいで寝不足。
おまけにこの暑さでボーッとしてしまう。
映画はどうでもいいから、涼しい所で腰かけて休みたい。
千石さんには悪いけど寝よう。
俺がぐったりしているのを気遣ってくれたのか、
椅子に座ってすぐ目を閉じ、堂々と寝る体勢に入る俺に何も言って来なかった。
こんな時は本当に気の効く人で助かると思う。
神尾だったら、寝るなって騒ぎ出すかもしれない。
返事をするのも億劫な状態を理解してくれるのは有り難い…
けれど
館内が暗くなり、話題のサスペンス映画が始まると、一気に目が覚めた。
出だしから面白いよ、この映画。
すぐに意識が映画へ集中。
眠るどころじゃない。
真剣に映画鑑賞。
そんな状態だったのに、千石さんは違ったらしい。
俺のヒザの上に手が伸びてきた。
そっと置かれる、千石さんの手。
もしかしたら、俺が寝てると思ったまま?
どうでも良いから、そのままにしておいた。
しばらくすると、千石さんの手が太股を往復しだしたので、叩き戻そうかと思ったけれど、映画の内容がそれどころではなかったから、その時もそのまま無視しておいた。
俺が寝てると思ってやってるんだろうけど、
映画が終わったら文句を言ってやる。
迫力のある音響とともに内容は一気に盛り上がってゆく。
凄く、面白い。神尾にも教えてやらなきゃ。
物語の主人公が大画面に大きく写し出され、いよいよ謎の真相を…
「っ!!」
急に。
さっきまで微妙な動きを繰り返していた千石さんの手が、
内股を撫で上げる。
かなり大胆な動きをし始めた。
どういうつもりだよ。
俺はちゃんと起きて映画を観てるのに。
映画に集中できないじゃないか。
どうしてこんな面白い映画をみないで
寝ている俺で遊ぼうとか思うんだろう?
信じられない。