●企画文

□そのA【左右】
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左右対称エンパシー  Ω/ΩΩΩΩ

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----なーんかもー…自信ないかも…。

そんな焦燥を隠し笑顔を取り繕う。

カフェの一角で、千石は絶賛アタック中の伊武深司と
小さなテーブルを挟んでお茶しているのだった。

「ねー、伊武クン〜」
「何度も断ってるはずですけど」
「なんで?いーじゃない?オレはお買得だよ〜?」

最初は髪のひとすじもなびかなかった伊武くんだったけど
オレの必死な決死のアプローチによって随分仲良くなれた。
携帯番号も交換したし、メールもたまには返してくれるし、
今じゃこうして、土曜の午後も誘えばお茶してくれるし、
最初に目標とした『お友達からv』は
とっくにクリアーしてるのに。

「ねー、オレとおつきあい、始めましょう!?」

それに。
伊武クンがこんなに特別に会ってくれるのって、
神尾くんや橘くんや…不動峰の仲間以外、
オレだけなのに!

「…なんで好きでもない人とつき合わなきゃいけないんですか」

大ー!衝ー!撃ー!!

ぐわーん!そんな素でフツーに言い切るんですかーっ!
「………伊武クン、オレの事、き、嫌いじゃない、よね?」
「…それは…嫌いだったらわざわざこんなトコ来てません」
「だったら!」
「しつこい。」

がっくり肩を落とし、ちょっと泣きそうな情けない表情の千石。
絵に描いたような落胆ぶりに、伊武はほんの少し首をかしげた。

サラリと動く髪と、どこか困惑ぎみの瞳に
落ち込みながらもうっかり見蕩れてしまった千石だったけれど、


「千石さんは…今みたいに
友人として会ってるだけじゃ、嫌なんですか?」

「へ…?えっと…そりゃ、伊武クンとつき合いたいとは
思うけど〜…会えるだけでも、満足です!」

そんなの嘘だよ伊武クン。
嘘だけど、我慢してるんだよ。
本当は満足できなくなってきてる。
会う都度、好きになってるから。

オレの返事に伊武クンは無表情でホッと息をつく。
「そうですか」
それが安心した様子に見えた気がしたけど…、
一瞬なので確信はなかった。


そして、千石清純
本日のデートでも、色良い返事は貰えませんでした。



「…あきらめたらどーだ」

「ひどいよ跡部っち!相談してるのに!」
「相談だぁ?ただの愚痴だろが。…っつーか、邪魔だ、消えろ」
「よよよよよ〜」
「うぜぇ…」

これから神尾と待ち合わせている跡部の前に、千石が現れて
進展しない伊武との仲をぐちぐちこぼしだしたのである。
跡部にとっては、これ以上ない迷惑。

「あっれー、千石さんだ!」

待ち人の神尾の登場に、跡部は千石を置き去りに歩き出したが
神尾は千石の背後に視線を向けキョロキョロしている。
「深司はいないんですか?」
「神尾クン!聞いてよー!」
「てめ、消えろっつったろーが!」
デートの邪魔だ!という発想は、デート相手の神尾にないのが敗因なのか
それとも神尾の親友伊武関連の話題だったのが敗因なのか
千石が図々しいだけなのか

今日の神尾との逢い引き時間は短縮決定のようである。
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