●パラ話

□*シンジニャン
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パラレルですよ
回囘亘囘回囘亘囘回囘亘囘回囘亘囘回囘亘囘回囘亘囘回

   シンジニャン   

回囘亘囘回囘亘囘回囘亘囘回囘亘囘回囘亘囘回囘亘囘回



部活帰り。
育ち盛りの中学生には空腹が辛いその時間帯

伊武深司は独りで帰り道を急いでいた。

「あー疲れた…お腹減った…神尾が法事で早退したせいで
つまんないから余計に空腹を意識しちゃうよ…
今俺がこんなにもひもじいのは神尾が全部悪いんだ…
それにしても早く晩ご飯食べたい…ご飯お漬物ご飯お漬物…」

道を往く人は、美麗な男の子が無表情で
「ごはんおつけものごはんおつけものごはんおつけもの…」
と唱えているので、気味が悪くて大きく迂回してすれ違った。

おかげで、人を避ける事無くまっすぐ突き進み歩いていたが
そこへ深司の行く手を阻む人影が現われた。

逆光で顔は解らないが、背の高い男だ。
頭部のシルエットはまるで果物の王様ドリアンのよう。

深司はすぐに「変質者だ」と思ったが、
何処かで会ったような気もする人物だったので、
漬物念仏を中断し立ち止まる。
すると不審者は友好的に声をかけてきた。

「やあ、奇遇だね。お腹すいてるの?」
「……はぁ。」

やはり顔見知りだった。
他人に興味のない深司の記憶が曖昧でも
目立つ容姿の彼を他人が記憶しているのはよくある事だった。

「よかった。丁度ここに、飯ごうと古漬けがある。」

「…………は?」

見れば、確かに蒸気を吹き出している飯ごう。
そして違えるはずもない香しい糠の匂いは小ぶりの漬物樽から…。

「…なんでそんな物持ち歩いてんですか…」
「飯ごうは外で使うものだよ。」
「そうだけど…」

異様な事態を淡々と受け止める深司の目の前で
飯ごうのフタが開けられると

湯気を上げながら、ふっくらと白く輝く眩しい炊きたてご飯……
そこへ、艶やかな飴色となるまで寝かされた瓜の古漬けが盛られ……


大概の事象に無関心無感動で
この時まで平然としていた深司が、初めて動揺を見せた。


その隙を逃さず、ずい、と突き出される
お箸と古漬けin白米。



「試してみるかい?」
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