●パラ話

□*丸い海が満ち欠ける
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==序章==



辺境のコロニーにある採掘場が、騒然とした。
さざめくように広がるそれはやがて歓声となる。

今はどのコロニーも自治区となっており
点在するその自治領の主事に力がないと治安が悪化する。
大潮になるとコロニーの中へやって来るファントムの駆除もままならず
生活の糧や命をも奪ってゆく生物に荒らされ、
潮汐を気にかける人々の暮らしも楽ではない。
まさにこの不動峰と呼ばれるコロニーは、それであった。

しかし新しく発掘されたプレイヤは既存のプレイヤたちと
明らかに質が異なる。
採掘者たちも、上層に位置しない一部のプレイヤも
その新しい存在に期待を抱いた。


情報を得た下層のプレイヤである深司と神尾は、
こっそりとセンターの立入禁止区域である地下へ赴いた。

先程運び込まれた
発掘されたばかりのプレイヤをひとめ見たくて。

シンと静かなフロアで
まだ、鉱物と一緒に結晶の様に立っているプレイヤ。

それを前にした神尾は反響する声を気にしながら小声で言う。
「まだ起こさねぇのかなぁ」
「数値…どれも凄かったらしいよ…」
「橘、って石に縫ってあるぜ」
「橘さんだね…。今の主事と替われば良いね」

深司と神尾はゼネラルスタッフである。
だが、実力も知られないまま下層のプレイヤとして
何の力ももたない雑用係に甘んじていた。

今の主事やゼネラルスタッフはクズだ、と
コロニーに暮らす者は言う。
神尾たちもそう思う。そして、反発しては
暴力で制裁される毎日を過ごしているのだ。


「橘さん…v」
神尾と深司は期待を込めて、
凛々しい面だちのプレイヤを眺めた。

パラ…

と、指の辺りの鉱物が剥がれ落ちる。

「…深司、橘さん少し動かなかったか?」
「…うん…でもまさか…採掘したてだし」
「だよな♪」
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