●パラ話

□*モンスター
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昔々。それは心優しい少年と魔物のお話。



 “この森 凶暴な魔物の住処有 近寄るべからず”


古くからそう言い伝えられる森の奥には
蒼い瞳を持つ魔物が、ただひとりで住んでいました。

名を跡部といい、強い力を持ち森の妖を従え
長い間多くの配下を使役し畏怖されていました。

しかし、そんな跡部に仲間と呼べるものはありませんでした。

寂しさを感じる事も、知る事も無く。

ただ自分の魔力で他の存在を支配する以外に、
己を示す術を知りませんでした。


あの日、迷子の少年と出逢うまでは。


神尾と言う少年は、迷子になり心細かったのか、
跡部を恐れることなく近寄ってきました。

もの怖じしない少年がただ珍しく、
ふたりで森の中を散歩して、花を愛で、木の実を拾い
小鳥とともに歌いました。

そのどれもが、跡部にとって初めての事でした。

長い間過ごしてきたのに、こんなに知らない事がたくさんあったなんて
跡部はとても驚きました。

「跡部はここにひとりでいるのか?」
「ひとりじゃない」

「でも友だちは?」
「そんなモノはいらないし、いない」

「えっ、でも、」
「でも?」

「オレと跡部は、もう友だちだよな」

跡部の住処のこの森は
こんなにも豊かで歓喜に溢れた場所だったんだね、と神尾は笑います。

小さな種が、やがて芽吹き、花が咲いて、実を結ぶ素晴らしさ。

それと共にあることが、どんなに心浮き立つことか。

跡部は神尾にたくさんの幸せを教えてもらいました。

なんと長い時間、自分はおもしろみのない暮らしを送っていたのでしょう。

思い知らされた跡部は愕然としました。

神尾と過ごす時間は楽しすぎて
もう、以前のようなひとりぼっちは
つまらないな、と思いました。

元気に駆け寄って来て笑いかける神尾がキラキラと眩しくてなりません。

跡部はたくさんの喜びをくれた神尾と、ずっとこのまま一緒に居たいと考えて、
生まれてはじめてせつない気持ちを知りました。
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