夢幻世界

□女刑事の乙女日記
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突然ですが、私には大好きで尊敬している人が居ます。
それは私の上司の来栖さんと言う人で、とても立派な刑事さんです。
来栖さんは優秀で、いつも私の、というか主に私の、憧れの的です。
私は来栖さんを見ているだけで、凄いなって思う反面、それだけではなくてもう胸がどきどきとして、時々きゅんとして、張り裂けそうになるのです。

同僚のなっちゃんに話したら「その気持ちはよくわからない」とやんわり一蹴されてしまいました。
でもなっちゃんも西島さんと良い雰囲気だし、西島さんは確実になっちゃんを好きだと思うのに、この気持ちが分からないなんて勿体無いです。
早く二人がくっ付けば良いのにな、と願いつつ、自分の恋も成就できないのに、というか絶対叶わないのに、大きなお世話だと反省します。

でも私は別に良いのです。
来栖さんが今後私に振り向いてくれなくても、私は思うだけで幸せなのです。
来栖さんが私の前を歩いてくれて、その背中を私が追いかけて、時々私に振り返ってくれたら、それだけでもう、天にも昇る気持ちになるから。
来栖さんはずっと、謎めいた道に足を踏み入れて、一つの大事なものの為に頑張っていていいのです。
でも、来栖さんがもしも、もしも万が一危ない道に逸れちゃったら、私は来栖さんの前に躍り出て、喜んで来栖さんの身代わりになりたいです。
防弾チョッキでも防刃チョッキでも爆弾でも括り付けて、この身を投げ打ってでも、来栖さんをお守りします。

来栖さんに大切なものがあるように、私の大事なものは何よりも来栖さんなのですから。

「華南、何書いてるんだ?」
「きゃあっ」

最後に今日の日付を書いて、はい。お終いとペンをいったん髪から離した次の瞬間に、後ろから掛かる渋い声色。
その持ち主が一体誰なのか直ぐに察した私は、椅子から転げ落ちてしまいそうになってしまう。
慌てて日記をばんっと閉じて、くるりと後ろを振り返る。

「な、なんでもない、なんでもないですよー来栖さーん。」

あはは、と慌てて背中に日記を隠す私。
来栖さんは明らかに不審者な私をじっと見ているけれど、そのうちふっと笑みを浮かべた。

「不審者として逮捕されたくなきゃ、きちんと仕事しろ。でないと俺がお前さんを逮捕するぞ?」

…よ、喜んで!
とは、流石に言えず、慌てて言葉をしまって私は再度謝る。

「はいっ、頑張ります。来栖さん!」

だから私は、今日も貴方の後についていくのです。
いつ貴方が、道をそれても良いように。

◆夢見がち刑事


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