□りんのさくぶん
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我が家のお母様は、とても素敵で優秀で綺麗な私の自慢のお母様です。
優しいし、天下一だし、私はお母様以上の素敵な女性なんて見たことありません。
そりゃあ、世の中にはお母様以上に素敵で、端麗な女性が居るかもしれないけど、でもきっとその様な女性を目の当たりにしても、私はきっと、私のお母様以上に麗しいと思える人は見当たらないんです。

お母様はいつも私と妹の桜を公園に連れて行ってくれます。
その後で必ず雁夜おじさんが遊びに来てくれるのです。

「凛ちゃん、桜ちゃん、元気?」

朗らかな笑顔で私達を撫でるおじさん。
雁夜おじさんはとても素敵なおじさま。
私と桜に似合う贈り物をいつも下さるし、私達の事を分け隔てなくいつも可愛がってくれる。
挨拶をすれば良い子だねって褒めてくれるし、ありがとうって言えば嬉しそうに笑ってくれる。そんな雁夜おじさんが私と桜はとても大好き。

「いつも悪いわね、雁夜くん。
子供達の遊び相手になってもらう上に、こんなに素敵な頂き物まで…如何感謝したらいいのかわからないわ。」
「あ、いや…この位は…。貴女が気にすることじゃないよ、僕が好きでやっていることだし…それに………。」

お母様が私達と同じようにお礼を言えば、忽ち雁夜おじさんは顔色を変えて背筋をしゃんとさせる。
雁夜おじさんの好きな人はどうやら私達じゃなくてお母様みたいで、いっつもお母様を見ると頬が桃のように赤くなるの。
お母様も雁夜おじさんの事は心から慕ってるみたい。
お母様とおじさんの関係は、おさななじみ。って言うんですって。
だからきっとお二人はとても仲が良いのね。

「いや、本当に妻子共々申し訳ないと思っているんだ。
いつもうちの家内と娘がお世話になっていて。」

でもお母様がそれ以上に大好きなのは、私も桜も大好きな、私達のお父様。
そしてお母様がお父様を思う以上にお母様を愛しているのがお父様。

「あら、貴方。お迎えがいつもより早いんじゃ…」
「ああ、今日は良い天気だったからたまにはお日様の下ではしゃぐ凛達の顔を見たくなってね。…勿論、君の顔も。」
「……もう、貴方は相変わらず口達者だこと。」

お母様がにこやかな笑顔でいつの間にか現れたお父様を迎え入れて、私も桜もお父様に歩み寄ろうとする。
でも、ここで普通の子供のようにパパー!なんて抱きつくことはしません。だって優雅じゃないもの。
あくまでもお父様に、挨拶するだけ。あくまでも、挨拶だけよ。

お父様の一歩手前で立ち止まり頭を下げる私に合わせて桜も私の一歩後ろで足を止めて拙くぺこりと頭を下げた。
お父様はおじさんとは違って私と桜を撫でる代わりに、とても優しい笑顔を下さるの。

「それに、いつも彼にばかり君や凛達を預けてしまっては彼に迷惑でしかないだろう?
だからきちんと、二人の父親として、君の夫として挨拶をしなくては、と…」
「……いいえ、全然。全く。少しもお気になさらず。
こっちは迷惑なんて思わないくらいに、楽しく過ごしていましたから。いつも、いつも。ああ、いつも。」
「ははは、楽しく過ごす君の目的は本来は別の所にあるのではないかね?」

お父様が現れた事によって、おじさんの表情が幾らか歪む。笑っているはずなのに、少しも笑っていない気がするの。
どうしてかしら、と思っていれば、お父様がお母様の肩を抱き寄せてにこやかに優雅に笑う。
それを見たおじさんはなにやらふるふると身体を震わせていた。
…寒いのかしら?

お母様はあらあらと苦笑すると、さり気無くお父様から抜け出して私達の方へと来てくれた。
そして、一緒に遊びましょうか。と私達を撫でてくれる。
くすぐったい気持ちで私と桜が顔をくしゃくしゃにすれば、お母様が微笑んだ。

「お母様、お父様と雁夜おじさん、いいの?」
「いいのよ。少し話し終えたら仲良くなるわ。…と言うよりも、させなくてはね。」

お母様は私が問い掛けると、とても困ったような笑い顔になって、その潤い在る唇から似合わぬ深い溜息を吐いた。

「本当、困ったお父様達ね。」

そう囁くお母様に、私はどう言ってお母様に返せばいいのか分かりませんでした。
でもお母様は悩める顔もとても美人で、お父様やおじさんがお母様に見惚れてしまうのもなんだかわかってしまうな、なんて娘として誇らしく思いました。

お父様は私の決定目標だけど、出来ればお母様のように美人で愛される女性にもなりたいな、なんて思ったりしてます。
…おっ、お母様には内緒だけどっ。

◆ははおもい

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