□Fate/ZERO系(♀)前半まとめ
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「おい、白野。来い、抱いてやる。」

真顔でとんでもない事を吐く英雄王に、一瞬度肝が抜かれるも、その意味が一体何なのかすぐに気づくと、自分は何の躊躇もなく彼の方へと近づいた。
勿論この選択肢は女性としては激しく間違いな方を選んでしまったのかもしれないが、正直の所、彼が本気の意味で自分に興味など持つ訳はないのだからと、自分は難なく彼に近づく事が出来た。

まるで我が物のようにソファを占領している彼に、最早咎める事も疲れて、いつものようにその隣に座り込む。
すると、よしよしと彼がにんまりと不敵な笑みを浮かべて自分の頭をひと撫でして来た。

「全く…毎度毎度何をされるかわかっているのに、素直にくるとは愛い奴よ。
良かろう、今日は我は気分がいい。
最高に愛でてやるとしようぞ、白野。」

はいはい、どうぞ。

なにやら上機嫌な英雄王に、自分は苦笑をしながら頷く。
すると、彼は直ぐにその了承を貰って自分の身体をいつものようにその腕で抱き寄せてきた。
その間に自分は書庫から持って来た適当な魔術書を取り出して、ぱらぱらと前回見た場所を引き出して読み始める。
彼がいつものように自分の身体を点検している間、最近では自分はこうして本を読みふけることにしていた。
そのほうが時間の有効活用であるし、何よりも、英雄王の人の身体への暴言に耳を貸さなくとも済むからだ。

「だから、貴様は、どうしてその様な不埒な事を主に働く。英雄王、いい加減に慎まんか。」

しかし、そこで割って入るのはもう一人の生真面目なサーヴァント。
毎度の事とはいえど、洗濯物を取り込んできてくれた彼は部屋に入るなり、ギルガメッシュをねめつけた。

ああ、ありがとう。ランサー。
と、自分が素直に洗濯物について彼に礼を述べれば、彼はきょとんとして自分に丁寧に頭を下げる。

「え。…あ、ああ、いえ。その位どうと言うことはありません。
貴女の手を煩わせるのが嫌なだけです。」

にこやかな笑みを浮かべるサーヴァントの姿に、やはり彼は癒されると笑みを返しながら思う。
だが、そう考えていれば突然英雄王の掌で口を覆われて、何かを答えることが出来なくなってしまう。

「ふん、主人に気に入られる為に必死だな雑種。まあ、良い。下郎はそうして慎ましく無駄な徒労を励むが良い。」
「…貴様は……」

わなわなと震えるランサーにそんな彼を見ているのが楽しいのか、ギルガメッシュはにやにやと笑ったままで自分を一切離そうとしない。
そんなご機嫌な英雄王に対して、いつも以上に不機嫌な顔をするランサー。

「毎度毎度、貴様は白野様を我が物のように扱っているがな…彼女は貴様のみの主と言うわけではなく、この俺の主でもあるのだと何回言えば理解するのだ。」
「何度言っても理解などせん。貴様がその我が物面をやめん限りはな。」
「それは貴様の方だろうが貴様の。
その醜い面を鏡に映してくれようか。」

言っている間にも英雄王の腕は止まる事はなく、いつものように落ち着きなく何処かしらを触ったままだ。
その彼の手の動きに伴って、ランサーの表情も段々と険しくなっていく。

「いいから黙ってその腕を離せ、切り落とされたいか英雄王。」
「ほう、余程返り討ちにして微塵にされたいらしいな、雑兵…。」

……いや。良いから貴方達、待てと。待ちなさいと貴方達。
と言うかだ。自分を間に挟んでのその喧嘩は止めていただきたい。
背中からの雰囲気と、前からの威圧感により最高に居心地が悪い。

本当この犬猿の仲はどうにかならないものかと、つくづく疲れ果ててはあと深く溜息を吐く。
…まあ、こうしてサーヴァント同士適当な喧嘩が出来るだけ平和だという事か。

◆これを楽天家思考と言う
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