泣き笑い道化師

□彼は時にハートブレイカー
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「はあーああーあーあー……」
「おい、そこの干物になりかけてる少年A。もう帰りの時間だがお前は帰らないのか。」
「放っといてくれたまえ、我が親友よ。俺はただいま絶賛傷心中なので動きたくても動けないのさ、へっ」
「そうか。じゃあな。風邪引くなよ。」
「ひでえよお!せめてなにがあったんだとかそこで心配しませんか?!いいえ、心配するのが親友ってものじゃないですか!寧ろ心配してくださいお願いします我があにきぃいい!」
「ええい暑苦しい!抱きつくな!というか誰がいつお前の兄貴になった!?」
「だって俺も高倉家に踏み込めばかんちゃんが優しくしてくれるかと、あで!」
「お前がかんちゃん言うな。俺の中の美しい思い出が一斉に汚れる!」
「ひっでえなお前本当に!?俺汚物!?汚物は洗浄だーッスか!?」
「お前の場合幾ら洗浄したところで全く綺麗にならなさそうだが…」
「兎に角聞いてくれよ、高倉兄!俺ってばさ俺ってばさ、すっげえ可哀想なんだぜっ」
「自分で可哀想って言う奴に可哀想な奴はいない。」

「この間彼女の家にサプライズプレゼント届けに黙って訪問したらさ、彼女ってば俺の知らない男と中でいちゃいちゃしてんの!
しかも俺が来た途端に、その子俺に弁解するんじゃなくてそっちの男の方に「この子(俺)、ただの私の友達でなんでもないからっ!寧ろ付き纏われて迷惑してるんだからっ」とか慌てて弁解しだすの!
なにそれ、なんだよそれ、お前の彼氏って俺じゃないの!?とか思うじゃん普通。
だから俺も腹立ってそれを問いただそうとしたらさ、相手の男から理不尽に「ストーカーが!」って殴られたんだぜ、ひどくねえええええ!」

「…人の話を遮って勝手に話し出す、お前も相当ウザいがな。」

「くそうビッチ!ビッチなんかもう大嫌いだ!どいつもこいつも俺を馬鹿にしやがってえ!」
「そんなお前だから馬鹿にしたくもなるんだと思う!」
「最初は弄られキャラ最高とか、ばかわいいとか調子の良い事言いまくってたくせに、結局はその程度の男ってことか俺はああ!
………はー……。」

「…落ち着いたか?」
「うん、わり。結構すっきりした。」
「そうか。」

「…ま、正直言うとさ。男に殴られたことよりも、彼女に対する怒りよりも、彼女に振られたのと彼女から裏切られた方がかなり痛くて。ショックで。
結局俺ってそんなもんなんだって思ったらなんかすげえ悲しくなって抑えきれなくなっただけなんだ。」
「…そうか。」
「だから本音の所、色々言うくせにその子の事、本気で責められないんだ。
馬鹿だろ俺。実際昨日あれから凄く凹んで彼女から電話かかってきても、恐くて出られなかったんだ。」

「お前本当つくづく変な女に引っかかるよな。」
「放っとけ、あっちこっちに手をつけるお前よりもマシ、だといいな。」

「…少なくとも、俺は本命は結構大事にする方だからな。」
「はは、冗談にしか聞こえねー。」
「…お前のその笑い顔も無理してるようにしか見えないけどな。」
「……つーか、一つ聞いて良い?」
「ん?くだらないことだったら却下するが、」
「何でお前嫌そうな顔してたくせに、俺の話に付き合ってくれたわけ?」
「…、それは……お前が聞けって言ったから」
「聞けって言っても嫌だったら馬鹿正直に聞くような奴じゃないだろお前は。」
「…単に、お前だからだ。」
「俺?」
「ああ。俺だってな、誰にだってそんな事をするお人よしじゃない。
お前相手じゃなかったら、俺だってぞんざいに扱って逃げてたさ。」
「……そうか、はは。なんか嬉しいな。」
「…ふん。」

「よし、そんじゃ帰り一緒しよーぜ、高倉兄。」
「お前みたいな馬鹿に帰りも付き合うのはいやだ。」
「帰る方向同じだから断っても付いていくけどね。あー、明日のたぶっさんの授業やだなー。明日俺当たる日だもん。」
「決まったわけじゃないだろ。」
「決まりだよー絶対決まりだよー。なー、ノートカンニングさせて高倉」
「目潰ししてほしいなら好きにすればいいが、」
「ひっでえ!容赦ねえ!!」
「容赦ないのはお前にだけだから安心しろ。」
「それの方が余計に酷いと思うんですが?!」
「っていうかお前、女はいいのか?」
「あー…正直言うとさっきまでかなり凹んでたんだけど、なんか大丈夫っぽい。」
「っぽい?」
「おう。女よりか今は高倉の事で頭が一杯になってるし、高倉兄と一緒に居たおかげでかなり楽しいみたい俺。」

「…」
「…なんぞ?なんの間かね、コレは。」

「…帰る。」
「ん?だから俺も帰りますぜ旦那。」
「お前はついてくるな、」
「えーなんでよ。何が気にさわ……あ、テメッ!なにダッシュで前触れなく逃げてんだコラ!!」

◆そんな男子の一日

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